ヒトエナメル質接着界面において、FIBを用いたマイクロサンプリング法を応用し、TEM試料を作成、観察を行った。硬さの異なる2種の材料の界面における加工は高度な技術を要するため、再現性の高い手法の開発を実施し確立することができた。また、複数の機能性モノマーのエナメル質に対する化学的結合の比較を行い、そのデータの蓄積から新しい機能性モノマーの開発への指標を検討した。これらにより、機能性モノマーがエナメル質接着の長期安定性に及ぼす影響を明らかにし、より信頼性の高い接着歯質接着システムの開発に役立てることができた。 最終年度ではエナメル質に留まらず、マイクロサンプリング法を歯科における汎用性のあるナノレベル解析ツールとして役立てるために、その適用範囲の拡大を模索することを行い、象牙質においても実施可能なレベルに手法を確立した。また、歯科材料におけるさらなる応用の可能性を模索し、ジルコニアセラミックスとレジンセメントの接着界面においてもFIB技術を応用したSEM観察を実施し、成果を得ることができた。 研究協力者でもあるクラレメディカル社の協力を得て、MDP、Phenyl-P、4-METAなどの代表的な機能性モノマーならびに新規試作モノマーを使用した2ステップセルフエッチングシステムを用いた実験を実施し、その成果を国内外の学会ならびに論文で発表を行った。 FIBを用いたこれらの手法は,歯学全般の従来から行われてきたSEM,TEMによる構造解析の分析精度を飛躍的に向上させることが可能であると考えられる。今後も継続的に実施されることで、ナノレベルの解析が飛躍的に進歩することが予測される。
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