研究課題
近年市場に供され、従前の超弾性特性とは異なり、形状記憶特性を有しているとされている2種のニッケルチタンファイルの機械的特性および相変態挙動を計測した。その結果、いずれも既存のニッケルチタンファイルに比較し弾性率が低く、各相変態点が高い温度領域に存在した。以上から、柔軟性が向上することで、根管形成による根管の変位を防ぐことが可能となると考えられた。さらに、実際の根管形成、特に髄腔開拡の形態が根尖部根管形成に与える影響を明らかにすべく、実験も行った。上顎前歯抜去歯のコーンビームCTデータを基に、光造形模型を作製し、試料とした。従来の髄腔開拡に比較し、より切縁方向に位置させたものを試験群とし、従来のものと、それぞれ根管形成を行った。根管形成終了後、根尖部より1 mm歯冠側部位で、根管と垂直に歯根部分を切断し、切断面の解析を行った。以上の実験から、髄腔開拡を切縁側に位置させ、器具の挿入方向を歯根軸に近づけることで、根管の変位の少ない形成が可能となることが明らかになった。また、ニッケルチタンファイルの根管内でのねじり挙動が、その合金に与える影響を調べた。すなわち、ISO3630-1に記載されている方法に準じ、ねじり試験を行い、ファイル先端部から3 mm部位にねじれ破折を導入した。その後、ナノインデンテーション法を用い、ねじれ破折に伴う、合金内部の微小硬度および弾性係数の変化を計測した。その結果、両計測項目とも減少した。以上から、根管内でねじり応力が加わる環境下で、ニッケルチタンファイルは柔軟性が増すことが示唆された。上記の実験より、根管の変位つまり、象牙質の偏在した過剰切削による菲薄化を防ぐことが可能となることが示唆された。象牙質の厚みを確保することにより、根管内壁の応力を減少させること、そして同部位からのマイクロクラックの発生を減少させることが可能になると推察される。
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