研究課題/領域番号 |
24792025
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 久美子 岡山大学, 大学病院, 助教 (50550802)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 象牙質知覚過敏症 |
研究概要 |
本研究は、象牙質知覚過敏症に関するものである。口腔内で形成される象牙質知覚過敏症を有する象牙質表面の性状は多種多様であり、決して規格化できるものではない。しかしながら、人工の象牙質知覚過敏症モデルを作製し、象牙質表面の状態をある程度規格化することは象牙質知覚過敏症の治療を解明するうえで重要である。本研究では、天然の象牙質知覚過敏症の代替試料となる象牙質知覚過敏症のモデルを作製することを平成24年度の主な目的とした。 象牙質知覚過敏症の知覚過敏帯では、象牙質の脱灰および再石灰化の繰り返しにより象牙細管が開口しているため、健全ヒト抜去小臼歯田中らが人工再石灰化象牙質を作製する際に用いた方法に加え、脱灰および再石灰化のpHサイクリングを応用した。すなわち、健全象牙質に対して人工脱灰を5日間、その後人工再石灰化を7日間行うことを1サイクルとした。モデルは、Yoshiyamaらの「象牙質知覚過敏症の患歯の象牙細管は約75%が開口している」との報告を参考に、試料の表面に存在する象牙細管の開口を走査電子顕微鏡(SEM)で評価し、開口が75%を超えるまでの期間をpHサイクリングの期間とし、1サイクル~3サイクルまでの期間で評価した。その結果、1サイクル群、すなわち5日間の人工脱灰溶液浸漬後に7日間の人工再石灰化溶液浸漬を施した群における象牙質表面のSEM像で、象牙細管の開口が約75%認められた。 そこで、この、5日間の人工脱灰後に7日間の再石灰化を施した群を、本研究における人工象牙質知覚過敏症モデルと設定した。このモデルに対し、象牙質知覚過敏抑制剤をコーティングし、SEMを用いて試料体表面を観察し、象牙細管の封鎖性を評価した。その結果、象牙質知覚過敏抑制剤の種類によっては、細管の封鎖ができているものがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工の象牙質知覚過敏症モデルを作製し、象牙質表面の状態をある程度規格化することは象牙質知覚過敏症の治療を解明するうえで重要である。そして本研究では、人工象牙質知覚過敏症のモデルをもとに研究を発展させる。また、過去の文献等で検索しても類似した研究がされていないため、求めるデータに必要なサイクル数の検討がつかず、模索した。そのため、基盤となるモデルの作製に予想以上に期間を費やした。求めていたデータが得られたため、年度内に市販の象牙質知覚過敏抑制剤の効果を検証することができたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。なお、当初の予定では、象牙質知覚過敏抑制剤の耐久性を評価するために、知覚過敏抑制剤を塗布した試料に対して人工象牙質知覚過敏症モデルの作製に必要なpHサイクリングと同じ期間のサイクルの負荷をかけることを研究の一つとして組み込んでいたが、必要なサイクルが1サイクルであったため、省略することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、健全象牙質に対して5日間の人工脱灰およびそれに続く7日間の人工再石灰化を施した試料を、象牙質知覚過敏症のモデルと設定した。今後はこの試料を用いて負荷試験を行う。すなわち、試料に対して象牙質知覚過敏抑制剤を塗布し、5000回あるいは10000回のサーマルサイクリングを行う。負荷試験後の試料は、界面を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)で観察し、表面をSEMで観察することで、各種知覚過敏抑制剤の、象牙細管封鎖の長期安定性を評価する。この研究により、象牙質知覚過敏症の予防および治療の研究におけるさらなる発展につながると考える。加えて、CLSMを用いる界面観察方法では、SEMとは異なり、試料の脱灰や溶解、蒸着が不要なこと、また大気中で観察できることから試料の破損の危険がなく、界面を観察することができる。そのため、本研究で作製した試料の耐久性の評価に適した方法だと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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