研究課題/領域番号 |
24792028
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
門野内 聡 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30609558)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | interleukin-11 |
研究概要 |
申請者は、in vitroで適度の負荷を付与したヒト歯根膜細胞においてIL-11の発現が上昇した結果に加えて、in vivoのラット歯周組織では、IL-11が歯槽骨側およびセメント質側の歯根膜組織に強く発現している結果を最近報告した。本研究の学術的特色としては、メカニカルストレスが負荷されたヒト歯根膜細胞におけるIL-11の発現に着目し、歯根膜組織における恒常性の調節機構への関与について解明することがあげられる。さらに、そのIL-11が歯根膜組織再生に及ぼす影響についても明らかにすることを計画しており、実際の臨床に活かすことができる研究となることが期待できる。本研究の独創的な点として、以下の2点(a, b)があげられる。 a: ヒト歯根膜組織における恒常性の機構を解析する研究において、適度の負荷にIL-11の発現が誘導され、その局在が歯槽骨およびセメント質側に強発現していることに着目した点。 b: 申請者のグループが最近樹立した、2種類の分化段階が異なるヒト歯根膜幹細胞株(Fujii et al. J Cell Physiol, 2008; Tomokiyo et al. Differentiation, 2008)を用いることによって、細胞の分化段階に応じたIL-11の及ぼす影響について評価することが可能である点。 このような申請者が企図したような研究は報告されておらず、歯根膜組織の研究分野に新たな活路を開く可能性が期待できる実験であることがあげられる 本研究の結果をもとにして、IL-11を用いた新規の歯根膜組織の再生療法の開発へと繋げていくことを企図しているが、IL-11はすでに血小板減少症に対する治療薬として米国では認可を受けて使用されており 、また現在日本においても臨床試験の途上にあることから、歯周組織再生薬として臨床研究への早期移行が期待できる薬剤であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、[1] 適度の負荷が加えられたヒト歯根膜細胞におけるIL-11の発現のメカニズム(レポーターアッセイ、リン酸化酵素のインヒビターを用いたシグナリング解析)、[2]ラット臼歯部非咬合モデルにおけるIL-11の発現(動物実験モデルを用いて組織学的解析)、[3] IL-11が骨芽細胞の分化に及ぼす影響(骨関連タンパク・破骨細胞調節因子の発現ならびに石灰化誘導能の解析)、[4] IL-11が未分化なヒト歯根膜細胞の分化に及ぼす影響(歯根膜幹細胞株を用いて線維芽細胞・骨芽細胞・セメント芽細胞への分化誘導能の解析)、[5] in vivo動物実験モデルを用いたIL-11の歯根膜組織再生能、の5項目を計画として挙げたが、現在[1]~[4]の4項目について研究を進めており、データも揃ってきている。現在、そのデータを揃えて論文を執筆中であり、今年度中に投稿する予定である。また、[5]に関しても現在計画中であり、[1]~[4]のさらなる解析に加えて、準備が整い次第、実行にうつしていく所存である。 これらの状況から、順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
in vivo動物実験モデルを用いたIL-11の歯根膜組織再生能の検討を3種類の方法で計画している。(A) SCIDマウス背部皮下への幹細胞移植モデルを用いたIL-11の歯周組織形成能の検討。(B) ラット臼歯部再植モデルの確立。(C) ラット臼歯部再植モデルを用いたIL-11の歯根膜組織再生能の検討。 研究計画を遂行するにあたって、研究体制は平成24年度のままで問題ないと思われるため、次年度以降も継続する。 さらに、検討した結果データを抽出して論文執筆を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養が必須であるため、消耗品は前年度と同様に使用することが考えられ、今年度はin vivoモデルを積極的に研究に用いていくため、新たな費用を捻出する必要がある。 消耗品費、旅費、謝金等およびその他の経費については本研究を適切に遂行し、また研究結果について広く公表していくために適正な旅費である。 設備備品費、旅費、謝金等が全体の研究経費の90%を超える計画は無い。
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