研究実績の概要 |
本年度は、ゲニステインによって歯髄炎が軽減するメカニズムを解析するため、ラット歯髄細胞にリポタイコ酸を添加し、プロスタグランジン活性の定量化と炎症関連遺伝子群の発現を調べることとした。ラット歯髄細胞(RDP)を①10ug/mlのリポタイコ酸(lipoteichoic acid;LTA)を含む培地で12時間培養を行った後、ゲニステインを1または10uM(以下G1、G10)添加し24時間後に上清を回収し実験群とした。また、陰性コントロールとしてゲニステインのアナログであるゲニスチンを添加し、サンプルを回収した。その後プロスタグランジンProstaglandin E2(PGE2)活性をELISA法で測定した。②また各サンプルのtotal RNAを抽出し、炎症に関連する遺伝子群(IL-1, IL-6, COX-2, TNF-α, CXCL10)のmRNA発現量をReal time PCR法により定量した。 その結果、LTA刺激によってRDPのPGE2活性が約6倍上昇したが、ゲニステイン添加によってその活性はコントロールレベルまで減少した。またゲニスチン添加によってPGE2活性は維持した状態であった。一方、IL-1, IL-6 などの炎症性サイトカインやアラキドン酸カスケードのCOX-2および炎症性ケモカインCXCL10の遺伝子発現が上昇するが、ゲニステイン添加によってそれらすべての遺伝子発現が抑制された。ゲニステイン添加によってラット歯髄細胞における炎症が抑制されることが観察された。このことからゲニステインによる覆髄は従来の水酸化カルシウム製剤と比較して炎症が軽減され、疼痛が少ない理想的な覆髄剤として用いることができることが示唆された。
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