研究課題/領域番号 |
24792032
|
研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
河野 舞 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (90586926)
|
キーワード | 歯学 / 漂白 / 二酸化チタン / 光機能化 |
研究概要 |
本研究は、低濃度の過酸化水素水と反応させる以前の二酸化チタンに、複合波長の紫外線を照射し、二酸化チタンに付着している炭化水素を除去することで、従来の漂白法よりも短時間で漂白効果が得られ、さらに生体(歯質や軟組織)に対しても安全性が得られるという仮説のもとに研究を企画し、光触媒二酸化チタンを用いた新規漂白法の開発を目指して基礎的研究を行うものである。 漂白前に紫外線照射を与える時間を確定すべく、予備実験として、アナターゼ型二酸化チタンの粉末(ST-01, 石原産業)をガラスシャーレに1 g採取し、1時間インキュベーターで安置(遮光)させた後、漂白前処理としてトランスイルミネーター(Uv Hand Lamps, USA)を用いて365 nm光源を照射した。前処理後、10 ppmのメチレンブルー溶液1 mlと混和し、トランスイルミネーターを用いて2分間光源を照射した。漂白前処理照射時間が15分まではControlと比較して吸光度は低下し、20分以降では吸光度が上昇する結果が見られた。次に漂白効果を客観的に評価するために、0.1 %濃度のヘマトポルフィリンエタノール水溶液を作成してろ紙に染みこませ、恒温槽で乾燥させたものを変色モデルとし、測色による漂白力の評価を行った。漂白前処理照射時間は5・10・15分とし、測色はShade Eye NCC(松風)を用い、漂白前後のCIEL*a*b*値を測定し色差を算出した。Controlと比較して、漂白前処理照射時間10分では漂白効果が高まり、15分以降では漂白効果に有意差が認められなかった。漂白前処理として紫外線を15分以上照射すると、Controlよりも漂白効果が得られなくなることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本実験が遅れている理由として、炭化水素の解析に時間がかかっていることが挙げられる。XPS(X線電子分光)装置を用いて二酸化チタン粉末表面の炭化水素を含む元素分析を行うことが困難であった。そのため、XRD(X 線回折装置)を用いて回析を行うことにしたが炭化水素は検出されなかった。粉末における炭化水素の分析そのものが非常に困難であり、なおかつ本学内で所有している機器での測定には限界があると思われ、実験期間内に原理を解明することは難しいと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までの実験結果より、前処理として紫外線を長時間照射するとControlと比較して漂白効果が得られなくなることが示唆されたが、ヘマトポルフィリン紙を用いた変色モデルに関する研究結果は未だデータにばらつきが認められることから、全体数を増やし、今後研究を進めることとする。また、ヒト抜去歯牙を用いて漂白前後の色調変化を比較検討するとともに、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて漂白前後のエナメル質表面の形態変化を観察する。さらに、エナメル質表面が親水性へ改質されているかを検討するために、接触角の測定を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予備実験に時間がかかってしまったことにより、測色計の購入に至らず、また本研究に関する学会発表も無かったために使用額に変更が生じたと思われる。 最終年度、測色計の購入および学会発表を行う予定である。また、測色計は高価であるため、今年度の残高と合算して購入する予定である。
|