本研究は、低濃度の過酸化水素水と反応させる以前の二酸化チタンに、複合波長の紫外線を照射し、二酸化チタンに付着している炭化水素を除去することで、従来の漂白法よりも短時間で漂白効果が得られ、さらに生体(歯質や軟組織)に対しても安全性が得られるという仮説のもとに研究を企画し、光触媒二酸化チタンを用いた新規漂白法の開発を目指して基礎的研究を行うものである。 漂白効果を客観的に評価するために、外因性歯牙着色モデルとして、0.1%濃度のヘマトポルフィリンエタノール水溶液を作成して濾紙に染み込ませ、恒温槽で乾燥させたものを変色モデルとし、測色による漂白力の評価を行った。二酸化チタン1 gをガラスシャーレに採取し、漂白前処理として365 nmの紫外線を照射した。照射時間は5・10・15・20分とした。漂白前処理後、H2O 1 mlと混和し、ヘマトポルフィリン染色濾紙に塗布後、光照射(G-ライトプリマⅡPlus、GC)。また、前処理としての紫外線照射を行わない二酸化チタンを対照群とした。、漂白前後の色調の測定は、分光色差計(NF-333、日本電飾工業)を用いた。CIE1976L*a*b*表色系を用いてL*a*b*値を求め、漂白前と漂白後の値の差(ΔL*・Δa*・Δb*)を求めた。また色差ΔE*abを算出し、色の変化および漂白効果を判定した。色差ΔE*ab値は、前処理時間が5・10・15分間と長くなるにつれ、対照群と比較して増加する傾向が認められた。一方、20分間では減少する傾向が認められた。ΔL*は、前処理時間15分間までは明度の上昇が認められたが、20分間では下降する傾向が認められた。Δa*は前処理時間15分間までは減少し、20分間ではわずかに増加する傾向が認められたが、Δb*は有意な変化が認められなかった。
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