研究課題/領域番号 |
24792036
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
利根川 雅佳 日本大学, 歯学部, 専修医 (80608414)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光干渉断層画像診断法 / 歯質厚径計測 / 口腔内計測法 |
研究概要 |
光干渉断層画像化法(Optical Coherence Tomography,以後,OCT)は,他の医療用画像技術と比較してチェアサイドで簡便かつ非侵襲的に高解像度の組織精密断層像を得ることを特徴としている。今回,OCTの効果的な臨床使用術式を確立するための基礎的研究の一環として,歯面形成あるいは齲蝕除去を想定して歯質を削除した場合の残存歯質厚径の測定に,OCTの応用が有効か検討した。 残存歯質厚径の測定には,ウシ下顎前歯歯冠部エナメル質および象牙質を硬組織精密低速切断機を用いて,ブロックを切り出して用いた。このブロック全面を順次研磨し,平坦面を露出させ,異なる厚さになるよう調整,これを測定用試片とした。これらの試片の断層像を,OCTを用いて観察することによって残存歯質厚径の光学距離を測定し,歯質の屈折率でこの数値を除すことで補正した。OCTによる断層像の観察には,SLDを光源として,マイケルソン型光干渉計の応用技術によって構築されたTime-Domain 型OCT装置を用いた。また,レーザ顕微鏡を用いて歯質の縦断面を撮影し,得られた両測定値を比較,検討した。 その結果,試作OCT装置を用いて歯質の断層像の観察を行ったところ,エナメル質においてはOCTイメージ像から残存歯質厚径の測定が可能であった。また,信号強度を解析したグラフからは,試片の表面および底面に最大ピークが検出され,このピーク間距離はイメージ像との関連性を示すとともに,レーザ顕微鏡による測定値と近似していた。一方,象牙質における残存歯質厚径の測定は,試片の厚さによって異なるものの,エナメル質と比較して困難となる傾向を示した。OCTは照射光線の透過性の違いによって内部構造をイメージ化することから,歯質の光線透過性の違いが残存歯質厚径の測定に影響を及ぼしたためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を発展,遂行するために必要なOCTに関しては,開発者からの光学分野における知識あるいは技術的協力も得られており,また,測定に対する手技も確立されていることから,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に得られた基礎的データーを踏まえ,実際の口腔内において計測を行うことで,歯面および窩洞形成時の残存歯質厚径あるいは齲蝕除去時の歯髄腔までの距離をチェアサイドで計測,得られたデーターをX線撮影と比較,検討し相互補完的に考察する。これによって,口腔内での使用における新たな問題点などを抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウシ下顎前歯歯冠部およびヒト抜去歯に対して歯質の切削および齲蝕象牙質の除去を行った際の残存歯質厚径の測定を行うため,歯質切削に必要なバー,SiCペーパーあるいは齲蝕検知液などの消耗品とともに,得られた測定値を考察するために必要なレーザ顕微鏡関連消耗品にかかる費用に使用する。また,それらによって得られた知見をもとに,実際の口腔内において残存歯質厚径の測定を,他の診断装置と比較して行うため,口腔内撮影用フィルムおよびX線撮影用フィルムの購入に使用する。なお,本研究では厚径計測装置の有効な臨床使用術式を確立することを目的とすることから,厚径計測装置関連消耗品に使用する。 また,本研究において得られた結果を国内,国外の学会で発表するため,国内,国外学会旅費経費として使用する。また,本研究結果は学術論文として国際専門誌に投稿予定であることから,外国語論文の校閲および投稿料として使用する。
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