歯質を削除した後の残存歯質厚径の測定へのOCTの応用とその有効性について検討した。H24年度ではウシ抜去歯エナメル質および象牙質をブロックとして切り出したものを測定用試片とした。その結果,象牙質における歯質厚径測定はエナメル質と比較して困難であり,OCTを用いた歯質厚径測定では,歯質の光線透過性の違いが影響を及ぼすことが判明した。そこで,H25年度は臨床条件を考慮して,歯髄組織を有するウシ下顎前歯を測定用試片とした。すなわち,切縁からエナメル‐セメント境までをエナメル質計測面,エナメル‐セメント境から根尖までを象牙質計測面とし, OCTを用いて,1mm毎に水平断面の撮影を行うとともに,歯質における屈折率の異なる構造あるいは境界を,異なる信号強度ピークとして検出し,ピーク位置の差から光学距離を求めるとともに,組織固有の屈折率でこの数値を除し,それをOCTによる厚径計測値とした。また,OCT計測後の試片を,計測面に対して垂直に1mm間隔で切断した後,三次元レーザ走査顕微鏡を用いて歯質厚径を計測,OCT計測値と比較,検討した。 その結果,OCTによる信号強度分布のピーク値は,エナメル質表層で-50dB,象牙質表層で-55dBであった。また,エナメル-象牙境および象牙質と歯髄腔との境界での信号強度分布のピーク値はそれぞれ-60dBおよび-75dBであり,周囲の信号強度よりも相対的に高い信号強度ピークとして検出され,エナメル質表層およびエナメル-象牙境,象牙質表層および歯髄腔との境界を判別することが可能であった。また,これらの測定結果より,それぞれの境界を指し示すピーク間距離から得られた残存歯質厚径は,3DマイクロCTによる測定値との近似性が認められ,OCTを用いることで歯質の境界検出および残存歯質厚径測定が可能であることが判明し,臨床応用への有用性が示された。
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