本研究の目的は、露髄面に炭酸ガスレーザー照射した場合の有効性、治癒態度を抜歯予定のヒトの歯を用いて評価することである。被験歯は、研究目的を理解し抜去歯を提供することに同意した研究対象者17名(計28歯)の協力を得て行った(歯種は智歯のみ対象)。 被験歯に直径1.5~2.0mmの露髄面を形成し、薬液により洗浄、止血を行った。その後、炭酸ガスレーザー(オペレーザーPRO、ヨシダ)を用い、照射設定は出力0.5W、出力モード:スーパーパルスモード1(パルス幅200μsec、インターバル5800μsec、0.003J/pulse)、照射時間3秒、照射モード:リピートパルスモード(10msec照射、10msec休止のサイクル、レーザー光の露出時間1.5秒)、非焦点位ビーム(露髄面表層から約20mm離した距離、ビーム径0.74mm)、エネルギー密度0.698J/cm2/pulse、空冷を併用、照射時間3秒を1クールとして、5クールで照射を完了した(露髄面に対する総エネルギー量3.75J)。 覆髄法は、炭酸ガスレーザー照射+歯質接着システムClearfil Mega bond(クラレノリタケデンタル)が14歯、水酸化カルシウム製剤Dycal(デンツプライ三金)が14歯である。さらに各実験群を6か月、12か月の期間に分けて経過観察を行った。観察期間が満了となった歯から順に抜歯を行い、固定、脱灰を行っている。今後は薄切連続切片を作製し、病理組織学的な評価を行う予定である。 本術式におけるレーザー照射の意義は、熱エネルギーにより露髄面表層に炭化・熱変性組織による人工的な痂皮が形成、出血や組織滲出液が確実にコントロールされ、エラーの少ない操作が可能となることである。観察期間中は、一部の症例で知覚過敏様の症状を示したが、途中で抜髄あるいは抜歯となった歯は1例もなく、順調な経過を示した。
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