研究概要 |
審美歯科診療時に用いる青色光は眼科領域では活性酸素種 (ROS) による網膜への悪影響を Blue Light Hazard という言葉にて注意喚起が行われている。歯科においては青色光は可視光であることから安全と考えられ, その影響は温度については多くなされているものの光化学においては検討が殆どなされていない。近年, 審美歯科診療において青色光が多用されるようになり, その照射範囲・時間が拡大される傾向にあり, また, 術野外である口腔軟組織にも照射されるようになりその影響を精査する必要が急務であり以下の検討を行った。 血管平滑筋細胞とヒト歯肉線維芽細胞 (HGF) に与える青色光の影響について検討を行った。血管平滑筋細胞への歯科用ハロゲン照射器による青色光照射は細胞増殖性活性を抑制し, この抑制にはアポトーシスが関与していた。また, このアポトーシスは N-acetyl-L-cysteine の添加により抑制されたことより活性酸素種の関与が示唆された。また, HGF の検討は, 光源にハロゲン (QTH) と発光ダイオード (LED) を用い,HGF への影響を MTS assay にて細胞増殖活性を解析,また電子顕微鏡による形態学的検討を行った。低出力青色光照射はLEDのみ細胞増殖活性が低下したが,高出力青色光照射は QTH,LED いずれにおいても HGF の照射時間依存的に細胞増殖活性は低下し,また,QTHよりもLEDにおいて有意な活性低下を示した。形態学的検討においては青色光の照射によってミトコンドリアに傷害を与えることが確認でき, この傷害は他の細胞小器官には認められなかった。 以上のことより, 青色光の歯肉線維芽細胞への光照射はミトコンドリアを起点とする細胞障害を引き起こすことが示唆され,今後この詳細なメカニズムの検討と防御法の確立が必要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞における検討計画である活性酸素種の特定を行い, この段階で論文執筆にとりかかる。 また, 当初の計画通り, 次年度は in vivo の検討に移行し, 動物を用い生体口腔組織における青色光の影響の検討を行なっていく予定である。
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