研究概要 |
コーティングは最も簡便なる表面処理技術であり,数μm~数10μmの膜厚で基材自体の特性をも凌駕する性能を付与しコートされた製品自体の価値をも引き上げることがで工業的手法である。現在確立されているシリカコーティング法は、シリカ薄膜の成膜には数百度の焼成や、大掛かりな真空装置が必要など、臨床応用には困難な点が多いが、口腔内でシリカ薄膜を形成する方法としてセラミック前駆体であるperhydropolysilazane (以下PHPS)を歯や修復物、あるいは補綴装置表面に塗布して、炭酸ガスレーザーを照射あるいは3%の過酸化水素水の蒸気曝露することにより、生体安全性を考慮し体温領域で口腔内にシリカ薄膜を成膜することが可能であることを発表した。これらの有用性を踏まえ,齲蝕予防を目的として,エナメル質表面にガラス(シリカ)薄膜を成膜する方法を開発した。 本年度は、歯面上に成膜されたシリカ薄膜の口腔内への臨床応用を想定し、シリカ膜の機械的な耐久性を歯ブラシ摩耗試験を行い、摩耗量や摩耗面の表面観察を共焦点レーザー顕微鏡やデジタルマイクロスコープ(現有設備)にて計測した。 歯ブラシ摩耗10,000サイクル後の摩耗量は,シリカ膜摩耗面が0.17(0.13) μm,エナメル質研磨面が2.32(0.38) μmを示し,シリカ膜摩耗面はコントロールであるエナメル質研磨面に対し有意に低い摩耗量を示した. 以上より,エナメル質上に成膜したシリカ薄膜は,10,000サイクルの歯ブラシ摩耗に対しても優れた耐摩耗性を有することが示された.
|