日本の高齢化率は25.1%で超高齢化社会に突入している。高齢者人口が増加するにつれ、全部床義歯装着者の割合が増加する。総義歯装着者では口渇感、咽頭部の乾きや口腔内の粘着感などを訴えるものが多く、口腔乾燥症が高い頻度で認められ、義歯装着困難な患者が増え続けている。一方、義歯装着者は高い割合で口腔内真菌感染(口腔内カンジダ症)が認められ、カンジダリスクは義歯非使用者の19.3倍である。さらに、義歯装着患者のほとんどが口臭の悩みを訴えている。漢方医学では古くから口腔乾燥症、口臭の治療に生薬を使っていて、それらの効果は我々らによって、一部立証されている。そこでナノテクノロジーに注目し、有効成分をナノバブル化することにより、効果が長期持続させることを考えた。この成分を含有する口腔ケア剤を開発することにより、本剤に抗菌性を持たせ、口腔内カンジダ症、誤嚥性肺炎などの予防効果のみならず、口腔乾燥症予防および治療、口臭抑制、抗インフルエンザウイルスなどにも期待できる、高齢者のための口腔ケア剤の開発を目的とする。本剤の開発により、義歯装着困難の解決、口臭の抑制、口腔内真菌感染症、口腔乾燥症の予防、治療を可能とし、大災害時の高齢者口腔ケアを大幅に向上し、高齢者のQOLの向上を目指す。 本年度は前年度の結果から選定した有効成分を用い、3種類の試作材料を作製し、本剤の動的粘弾性およびその耐久性、保湿性・湿潤性、毛細血管新生能力などについて検討を行った。 その結果から、有効成分の濃度および配合量の特定ができ、保湿性・湿潤性、耐久性、血管再生などの観点から、ナノバブル化生薬成分配合長期作用型口腔ケア剤の試作が可能となった。
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