研究課題/領域番号 |
24792053
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山口 哲史 東北大学, 大学病院, 助教 (50400263)
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キーワード | MRI / 咬合力 / 咀嚼筋 |
研究概要 |
当該年度では、まず前年度に製作した咬合力センサーを実際にMRガントリ内において被験者の口腔内で使用し、水を封入した樹脂チューブおよび接合部の強度や、撮影するMR画像に対する影響の有無を評価した。その結果、製作したセンサーが最大咬合力に十分耐える強度を有していることや、MR画像にノイズ等を発生させないことが確認された。 次に、顎関節内部の下顎頭を高解像度で撮影可能なMR撮影シーケンスの調整を行ったが、関節円板や下顎頭表面の関節軟骨におけるT2値を評価するうえで十分な解像度とノイズの少ない鮮明な画像を両立するのは困難であった。そのため、顎関節撮影には新たに3TのMR装置の使用を申請し、次年度に再度撮影シーケンスの検証を行うこととした。本年度は、1種類の咬合力センサー(右側臼歯部遊離端欠損)によって咬合支持状態を変化させた健常有歯顎者5名にクレンチング運動を行わせ、全咀嚼筋の活動を評価した。クレンチング時の咬合力は各被験者の最大咬合力に対する40%の強度とし、クレンチング継続時間は1分および2分とした。その結果、1分間のクレンチングでは臼歯部咬合が存在している左側の咬筋浅層や内側翼突筋の活動が他の咀嚼筋よりもわずかに強いのに対して、2分間のクレンチングでは咬合支持が存在しない右側の咬筋や内側翼突筋の活動が明確に増加することが示された。これは、臼歯部遊離端欠損を放置した状態で咀嚼筋群に強い負荷をかけると、特に欠損側の咬筋や内側翼突筋の負荷が過大となる可能性を示唆するものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、前年度に実施した実験により最適と評価された撮影条件とタスク条件(咬合力)を使用し、各被験者の歯列弓形態に合わせて新たに作成した3種の咬合力センサー(欠損部位無し・片側臼歯部欠損・両側臼歯部欠損)によって咬合支持状態を変化させた健常有歯顎者にクレンチング運動を行わせ、全咀嚼筋の筋内活動分布と顎関節軟骨の負荷分布を評価する予定であった。しかし、咬合力センサーの新規開発に予想以上の時間がかかり検証作業が本年度にずれ込んだことと、顎関節の下顎頭を高解像度で撮影可能なMR撮影シーケンスの開発が遅れたことによって、1種の咬合力センサーを用いた咀嚼筋活動の解析しか行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、咬合力センサーの形状バリエーションを増やして咀嚼筋活動の解析を進めるとともに、3TのMR装置を新たに使用して顎関節における下顎頭や関節円板の解析を行い、最終年度前半にはデータ収集を終える予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、咬合力センサーの製作と検証および顎関節用撮影シーケンスの調整に時間がかかり、本年度のMRI撮影回数が当初予定していた回数より少なかったこと、さらに撮影したMR画像が少なかったためにバックアップや解析用の機材の購入が遅れていることにより生じたものである。 解析に必要なMR画像を全て撮影し、MRI撮影料や被験者等への謝金に必要な経費として平成26年度請求額とあわせて使用する予定である。また、MRI撮影と解析によって膨大なデータを取り扱う必要があるため、データ解析やバックアップ用の機材を整備する予定である。
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