本研究は、高い骨形成能を有するリン酸カルシウムを、硫酸カルシウム由来のCa2+を介してアルギン酸と架橋構造を形成することで、柔軟な賦形性を有し、骨欠損の大きさ、形状に左右されることなく応用可能な生体内吸収性骨再建材料を開発することを目的とした。申請者はこれまで、複合体作成過程において、アルギン酸濃度や精製過程における遠心分離の回転速度を変化が、1)リン酸カルシウムの取り込み効率、2)Scaffoldとして求められる気孔径や架橋形態、3)骨再建材料として求められる機械的強度、賦型性、形態保持性に影響を及ぼすことを報告している。将来的なin vivoでの埋入試験を見据え、最も効率よくβ-TCPが取り込まれる条件がアルギン酸ナトリウム粉末1.0wt%の条件下であることを特定し研究を進めた。しかしながら、FTIRおよびXRDによる解析により、作業工程のわずかな違いにより、作製される複合体の性状が異なり再現性に乏しい。In vivoでの実験を見据え、実験の再現性を高めるため、繰り返しの実験を進めた。その結果、ある程度の再現性の向上を得られたが、安定した材料の供給までには至っていない。また、高濃度のリン酸カルシウムは細胞毒性が指摘されており、骨芽細胞に対する細胞毒性を制御する濃度を探索し更なる改良を模索するために、細胞のアポトーシスのメカニズムについて基礎的な実験も行った。さらに、バイオリアクターを用いた細胞培養実験を行うことで、動的条件下での細胞分化、増殖の基礎的データを採取した。これらをさらに進めていくことで、より優れた骨形成能を有する骨再建材料の開発が期待できる。
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