本課題は、味覚障害が摂食動作に及ぼす影響を明らかにするため、健常被験者6名を対象として実験的味覚障害を惹起し、チョコレートチップクッキーを摂取させ、咀嚼・嚥下動作を記録した。さらに、嚥下閾まで咀嚼した食塊を回収し物性を解析し、コントロールと比較した。その結果、実験的味覚障害では、嚥下直前の咀嚼サイクルにおける開口量が有意に小さくなり、食塊の硬さと付着性は低下し、凝集性が増加することが明らかとなった。これらの結果は、味覚障害を惹起させた状態では、本来嚥下に必要とされる以上に咀嚼が進行していることを示唆しており、何らかの機序で食品を積極的に摂取しようとする働きが阻害されているものと推察された。
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