研究課題
本研究では,骨芽細胞におけるストレス応答性MAPキナーゼJNK・p38のメカニカルストレスによる活性化およびその下流のキナーゼ活性依存的な遺伝子制御機構に着目し,メカニカルストレス感知から細胞内シグナル伝達を介した生体応答により制御される骨メカノバイオロジーの詳細を線形的に究明することを目的とした.これにより,骨芽細胞にとって「適正な」メカニカルストレスと「過大な」メカニカルストレスを酵素活性に基づいて生化学的に説明することを試みた.骨芽細胞への伸展刺激に対し,ERKは非常に微弱な伸展で活性化されたが,JNKおよびp38の活性化には強い伸展刺激を必要とした.また,この上流に位置するMAP3KとしてTGF-beta-activated kinase 1 (TAK1)およびApoptosis signal-regulating kinase 1 (ASK1)の2つを同定した.両者の活性化には伸展刺激に伴う細胞外Ca2+の流入が必要であった.一方,活性酸素種の産生はASK1経路の活性化のみに必要であった.JNKおよびp38下流で制御される遺伝子発現をマイクロアレイにて解析したところ,JNKの下流でTNF受容体ファミリーの一員であるFn14が,p38の下流ではC-Cケモカインの一員であるCCL7が発現制御されていることが明らかとなった.Fn14は骨芽細胞のアポトーシス誘導に関与していた.さらに,Fn14はユビキチンープロテアソーム系により速やかな分解を受けており,そのユビキチン化部位は細胞質側末端に存在する109番目のリジンであることが示された.実際にこの部位の変異体では野生型に比べCaspase-3の活性化が促進されていることから,Fn14は転写レベルのみならず翻訳後修飾のレベルで常に発現量を低下させられることによりその効果を抑え込まれていることが示唆された.これらのことから,大きなメカニカルストレスにより活性化されるJNKおよびp38は骨芽細胞の機能抑制に機能することが示唆された.
すべて 2014
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Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 6438-6450
10.1074/jbc.M113.536300