研究課題/領域番号 |
24792065
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和田 淳一郎 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (20611536)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発語機能 / 大連結子 / 音声認識 / 客観的評価 / 可撤性義歯 |
研究概要 |
H24年度は予備実験として、上顎可撤性義歯のCo-Cr製の大連結子の幅・断面形態が発語機能に及ぼす影響の調査を行い学会発表(第121回日本補綴歯科学会学術大会にて)を行い現在論文作成中である。 下顎可撤性義歯の発語機能への影響は上顎可撤性義歯と比較して小さく、その影響を検知するためには従来法(構音時の舌接触域の評価や音声の周波数、フォルマントの評価など)と比べより微細な変化を捉えられる検出力の高さが必要となる。上顎可撤性義歯の影響については過去に従来法を用いて行われているものの、その多くは口蓋の被覆面積や走行位置を対象とした、比較的検知し易い評価対象であった。今回、音声認識による客観的発語機能評価システムを用いて、より細かな変化である大連結子の幅および断面形態の違いが発語機能に及ぼす影響について評価した。また用いた大連結子は、過去の研究に用いられるような厚みの出る光重合型レジンプレートを用いた実験床ではなく、臨床現場で違和感軽減のため剛性を保ちつつ厚みを薄くできるCo-Cr製の大連結子を採用し、より変化が微細な条件を揃えて行うこととした。 その結果、両側設計の上顎可撤性義歯に必須な大連結子は材料を変化させ厚みを薄くしても、ある音節では発語機能に影響を与えている可能性があることが示唆された。また、音節によって影響の受けやすい断面形態に差がある可能性、幅を減らして被覆面積を小さくすることでかえって影響が大きくなる傾向を示す音節の存在など、これまで行われてきた従来法を用いた先行研究では言及されなかった、大連結子が発語機能に及ぼす影響が明らかになった。 以上の成果は、単に上顎の大連結子の発語機能への影響がより詳細に解明されたという意義にとどまらず、今後発語機能が出にくいとされる下顎義歯への影響を評価する上で、本研究に用いた発語機能評価システムが有効である可能性を示唆するものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度の成果から、今後下顎義歯の大連結子が発語機能に及ばす影響についての評価を行う上で、我々が使用しているシステムの検出力を確認することができた。また当初の目的の一つであった下顎可撤性義歯を対象とした研究の基準値の設定が完了した。このことは、既に並行して開始している下顎可撤性義歯の大連結子の形態が発語機能に及ぼす影響の評価結果の妥当性の確認でもあり、現段階では現状の実験系で引き続き研究を進めていくことが可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
予備実験である上顎可撤性義歯の大連結子の幅および断面形態の違いが発語機能に及ぼす影響についての成果を論文としてまとめることをH25年度前半の目標とする。また並行して健常有歯顎者を対象として下顎の大連結子の形態を変化させた際に生じる発語機能への影響を実験床を用いて評価し成果をまとめる予定である。更に、国民健康の増進へ寄与度を増すために、患者の主観的評価と発語機能障害の程度の関連性(主観評価と客観評価の関連性)を解明する後続研究の計画を立案する。これまで、評価方法の主観性・客観性の差はあるもののその関連性は検証されておらず、これまでの研究成果を患者のQOL向上に結び付けるために必要な研究であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に用いる実験床作製に必要な材料購入と成果発表の為の学会参加に関わる諸費用、および論文投稿に関わる諸費用が主な使用用途となる。また現在用いている発語機能評価システムの改変の為に、システム構築に必要な費用が発生する。いずれも、現在の予定金額および前年度からの繰越金の総額内で計画通り研究遂行するために問題のない状況であると考えられる。
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