研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、研究代表者が先に確立したラットインプラント咬合モデルを用いて、インプラントに加わる咬合力によって起こる骨吸収のメカニズムに関与するたんぱく質を免疫組織化学的に検索し、将来の臨床的な骨吸収対策確立の端緒とすることである。近年デンタルインプラントの成功率は臨床的に満足できるレベルにあると考えられるが、依然として脱落・失敗に至るインプラントも存在する。これら失敗のうち、十分な治癒期間を経て、オッセオインテグレーションを獲得した後の脱落は、その原因の90%が咬合力によるものであると言われているが、咬合力による骨吸収のメカニズムについてはその詳細がわかっていない。平成24年度は、研究代表者が大学院在籍中に確立したラットインプラント咬合モデルを用いて、咬合力による骨吸収が生じる条件で実験を行う計画としていた。4週齢雄性ウィスター系ラットの両側上顎第一,第二臼歯を抜歯し、抜歯窩治癒期間(4週間)後に片側の粘膜骨膜弁を剥離し、注水下にピーソリーマーにてインプラント窩を形成して、特注により製作した純チタン製インプラント(スクリュータイプ)を骨同縁に植立した。4週間後にインプラント体に長方形でカンチレバータイプの上部構造をスクリュー固定し、過大な咬合力を負荷させる形で咬合させた。咬合開始後5、10、15日後に脱灰薄切標本を作製し、組織学的に観察したところ、インプラント周囲での活発な骨吸収が観察された。現在、OPG、RANK、RANKL等による免疫染色を行っており、今後は継続的に動物実験と免疫染色を行い、確実な結果を得る予定である。
2: おおむね順調に進展している
カンチレバータイプの上部構造を装着することによって、インプラント周囲での活発な骨吸収が起こることが確認された。組織切片に対する免疫染色は概ね順調に進んでいるが、検索タンパク質について1次・2次抗体濃度、反応温度・時間、標本の固定方法等に関する至適条件を改善しながら研究をすすめる必要がある。
平成24年度に行ったインプラント咬合実験とそれに対する免疫組織化学染色を継続して行い、被験個体数を増やすと共に、手技をより確実なものとして目的たんぱく質の検索に努める。埋入したインプラントにスクリュー固定するアバットメントには2種類あり、平成24年度に用いたカンチレバータイプのものは、その装着によってインプラント周囲の骨吸収が活発となり、オッセオインテグレーションの崩壊に繋がる。一方、咬合面が円形タイプのものは、インプラントに咬合力が加わることが確認されているものの、インプラント周囲の骨吸収はほとんど観察されない。平成25年度以降には、円形タイプの上部構造を装着する個体の組織切片をも作製し、カンチレバータイプ装着の時と同様のメカノレセプターに対する免疫組織染色を施し、それらの発現を検索する。これら2条件の実験結果を比較することにより、咬合力によって起こる骨吸収の際に特異的に起こるメカノレセプターの発現パターンを同定することが可能であると考えられる。また、in vitroにおける各種たんぱく質発現検索として、3次元培養系を用いてラット頭蓋骨より採取した骨細胞および骨芽細胞を培養し、各種条件で圧縮刺激を加える。一定時間経過後に培養細胞よりRNAを抽出し、上記動物実験で検索対象としたメカノレセプターや破骨細胞関連の遺伝子発現を、RT-PCR(Real Time PCR)を用いて検索する。
実験用動物(ラット)、標本作製用消耗品、実験器具、抗体・試薬類に使用予定である。
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The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants
巻: Volume: 28, Issue: 1 ページ: 109 to 116
10.11607/jomi.2388