抗真菌作用を有する新たな小分子化合物を探索するため,1280種の薬理活性を持つ小分子化合物ライブラリーあるLOPAC1280TMを用い,C. albicansに対する抗真菌性のスクリーニング検査を行った.その結果,C. albicansに対し抗真菌作用を有する35個の小分子化合物が検出された.そのうち26個は静菌的作用,9個は殺菌的作用を有し,中でもBay11-7082,Bay11-7085,Ellipticine,Sanguinarine,CV-3988は強い抗真菌作用を有しており,新たな抗真菌剤の候補として検出された.これら5個の小分子化合物に対し,「浮遊培養」,「付着培養」,「バイオフィルム培養」における抗真菌剤感受性テストを行った結果,「バイオフィルム培養」に対するMICは,Bay11-7082,Bay11-7085,Ellipticine,SanguinarineとCV-3988はそれぞれ1 mM,500 μM,62.5 μM,250 μMであった. 次に,ヒト歯肉線維芽細胞に与える影響を検討した結果,Bay 11-7082 とBay 11-7085,Ellipticine,Sanguinarine,CV-3988はそれぞれ15.6 μM,3.91 μM,1.95 μM,250 μM未満の濃度では細胞の増殖抑制を認めたが,細胞の死滅は認めなかった.したがって,250 μM未満のCV-3988がC. albicansに対し抗真菌作用を有し,ヒト線維芽細胞に対し毒性が低いことが示された.したがって,CV-3988を抗真菌剤として用い,義歯床用材料の作製を行った.ディスク拡散法により床用材料の抗真菌性を評価した結果,CV-3988を結合させない場合,発育阻止円は形成されず,結合させた場合,ディスクの端より2.0±0.2mmの発育阻止円が形成された.さらにディスクをEDTAに浸漬することにより,抗真菌作用は消失した.以上の結果より,この義歯床用材料は抗真菌性を任意に付与することが可能であり,義歯由来の口腔カンジダ症の予防および治療に貢献する可能性が示唆された.
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