研究課題/領域番号 |
24792083
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三野 卓哉 岡山大学, 大学病院, 医員 (10625718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔インプラント / インプラント周囲炎 / マイクロアレイ法 / 質量分析法 / 生物学的リスクファクター / 診断プロトコル |
研究概要 |
インプラント周囲炎の発症や進行に関与するリスク因子を明らかにするという本研究の目的を達成するための第一段階として,インプラント体周囲の3スレッド以上の骨吸収がどの程度発生しているかを明らかにし,臨床診査プロトコルを作成するために,平成24年度は後ろ向きの診療録調査およびレントゲン診査を行った. 骨吸収量のレントゲン評価に先立って,まず過去のデンタルエックス線写真を用いて,骨レベル評価の信頼性を検討した.検者は,予め十分にキャリブレーションを行った3名の歯科医師とし,評価はそれぞれが独立し,間隔をあけて二度行った.その結果,検者内一致度および検者間一致度の級内相関係数は0.76~0.98を示し,十分な信頼性を確認できた.本検討により,デンタルエックス線写真におけるインプラント体周囲の骨吸収の評価が可能であることが確認できた. そこで次に,3スレッド以上の骨吸収の発生率を明らかにするために,診療録およびレントゲン調査を行った.対象は平成18年1月から平成23年10月までに,当科にてプロビジョナルレストレーションを含む上部構造を装着した全患者とし,必要なデンタルエックス線写真がない患者は除外した.選択基準を満たした対象は277名,591本(埋入時平均年齢59.9±10.6歳 男/女:92/185)であった.このうち,3スレッドを超えた骨吸収を示したインプラント体は71本(12.0%)であった.本調査により3スレッド以上の骨吸収を有する患者リストができた. また, 今後の前向き調査で使用する臨床診査プロトコルを過去の文献および診療録調査の結果をもとに作成した.これらの結果により初期インプラント周囲炎患者に対して行う前向き調査の準備が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,初期インプラント周囲炎患者30名をサンプリングし,経時的な臨床診査および軟組織,歯肉溝浸出液の採取を行う予定であった.しかし,本研究における初期インプラント周囲炎患者とは,周囲歯肉に腫脹・発赤等の臨床所見を認めるが,レントゲン的には微量の骨吸収を示す程度としており,数多いインプラント患者からその状態のインプラント体を抽出することは容易ではなかった.また,初期インプラント周囲炎患者をどの程度の間隔で追跡すれば,本研究の目的を達成しうる情報を得ることができ,かつ被験者の負担過重とならないかが不明であった.そこで,まずは当科のインプラント患者リストを用いて後ろ向き診療録調査を行い,インプラント体周囲炎の指標となる生理的骨吸収を認めるインプラント体がどの程度存在するか,機能期間別の骨吸収量はどの程度か,またインプラント周囲炎が発症する直前,あるいは初期のインプラント周囲炎を抽出するための臨床指標がないかをカルテ調査にて検討した.多くの時間を要したが,今回行った診療録調査および過去の文献から作成した臨床診査プロトコルは本研究を推進する上で必要不可欠で,大いに役立つものである.
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今後の研究の推進方策 |
1.平成24年度の診療録調査結果をもとに,初期インプラント周囲炎患者のサンプリングを行う. 2.臨床的リスク因子同定のための臨床診査およびインプラント周囲炎に罹患した部の 軟組織や歯肉溝浸出液を経時的に採取する.同一口腔内にインプラント周囲炎に罹患していないインプラント体を有する場合はコントロールとして健全組織を採取する. 3.得られた臨床検体はマイクロアレイ法や質量分析法にて解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,得られた検体をマイクロアレイ法や質量分析法にて解析する予定であり,これらを,業者に委託する費用が多く必要である.また,組織や浸出液を採取する際のキッドや検体を固定するための試薬等も必要となる.さらに,本研究を実施するための情報収集や研究成果発表のために学会に参加する予定であり,旅費が必要となる.
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