研究課題/領域番号 |
24792091
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40380050)
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キーワード | 金属アレルギー / 歯科金属 / 樹状細胞 / チタン |
研究概要 |
我々はすでにニッケルに対するアレルギーモデルマウスを開発しているため,昨年度よりこのモデルを他の金属に応用できるかどうか検討してきた.このモデルマウスは,まず腹腔内にアジュバントと混合したニッケル溶液を投与し,2週間後に耳介に再度アジュバントと混合したニッケル溶液を皮下投与することで耳介にアレルギー反応を発症させるものである.このモデルを他のアレルギー原性金属(コバルト,クロム,パラジウム,金)で再現可能か検討し,各種金属(ニッケル,コバルト,クロム,パラジウム,金)を投与したマウスでは,ニッケルに対する耳介腫脹反応が著しく強かったものの,クロム,コバルト,パラジウムに対しても軽度のアレルギー反応を示した.同様の実験をチタンでも行ったが,チタン投与マウスではアレルギー反応を認めなかった. マウス骨髄由来の樹状細胞(Dendritic cells; DC)にこれらも金属を投与してDCの反応を解析したところ,チタンで刺激した群のみIFN-γやIL-12の産生が低く,DC表面のMHC classIIの発現も他の金属のようは増強されなかった. 次に,チタン投与マウス脾臓からT細胞を採取し,チタンに対するサイトカイン産生量や表面抗原をELISA,フローサイトメーターで解析したが,アジュバントのみを投与しているコントロール群から採取したT細胞と比較して,IL-2,IFN-γ,IL-10の産生量や,CD44,CD45の発現に大きな変化を認めなかった. これまでの研究で,ニッケルアレルギー反応時,DC上でMKK6/p38の活性が増強することが示されている.そこでチタンを投与したDC上でのMKK6/p38活性と,チタンを投与したマウスの耳介皮膚でのMKK6/p38活性を,in vivo,in vitro両方から検討したが,どちらもネガティブコントロール群と比較して増強していなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度からの続きの動物実験を行いながら,申請書に記載した本年度の予定通り,歯科金属に対するDCとT細胞の反応を解析し,チタンの刺激能も検討した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で,我々が開発した方法そのままではチタンアレルギーを発症させることができなかった.そこで,今年度は,アレルギー発症時に発現が増強している遺伝子を導入したDCを用いてチタンアレルギーの誘導を試みる.具体的にはMKK6もしくはp38遺伝子をトランスフェクションしたC57BL/6Jマウス由来DCに48時間チタン刺激を加えた後,48時間T細胞と共培養する.抗原提示を受けてチタンを記憶したT細胞,もしくはチタンに対する反応性が上昇した遺伝子導入DCを無感作正常C57BL/6Jマウスに移入し,2週間後にアレルギーが誘導されるか否かを観察する.アレルギーの発症が確認された場合,全身検索を行い,ニッケルアレルギー発症マウスと比較してチタンアレルギー症状の特異性の有無を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はほぼ予定通りに研究費を使用したが,前年度からの繰り越し費用があったため,次年度使用額が生じた.本年度の繰り越し額は,マイクロアレイキットや抗体購入費用が予定金額よりも低く抑えられたことから生じた. 次年度の研究費と併せて,マウスの購入と遺伝子導入や細胞培養にかかる試薬および消耗品の購入に充てる.
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