研究課題
I. 目的 われわれはチェアサイドで実際に患者が使用中の義歯維持力を測定可能なコンパクトな装置を開発した.本研究は,測定部位の違いが維持力に及ぼす影響を明らかにし,維持力の評価をする際の最適な部位および荷重方法を決定することを目的とした.II. 方法 被験者は,インフォームドコンセントが得られた30名(平均80.2歳)の上顎無歯顎者とした.測定は牽引測定と加圧測定を行い,牽引測定は中心窩を結んだ線と正中線の交点(C),義歯後縁正中部(P),中心窩部(MF)とした.加圧測定は切縁の正中部(IM),頬側咬頭部(PC)とし,シーネの部分を開窓し人工歯部分を直接加圧した.全部床義歯に人工唾液を十分に塗布し,口腔内に手圧にて圧接後,一定の速度で維持力測定装置を用いて,牽引と加圧を行った.測定は各5回行い,義歯が離脱した時の荷重量を維持力とした.統計学的分析は三元配置分散分析,Tukeyの多重比較とPearsonの相関分析を用いた.III. 結果と考察 C,MFでは約半数が測定不能となり不適切部位であった.P,IM,PCは全ての被検者で測定可能であった.各測定部位の維持力を比較すると,P(2.6±1.2 N)とIM(2.8±1.2 N)の間には有意差はなく,PC(4.5±2.6 N)はPとIMに比べ,有意に大きかった(p < 0.01).また,PとIMの間に有意な正の相関が認められた(r = 0.640,p < 0.01).PとPCの間にも有意な正の相関が認められた(r = 0.452,p < 0.05). 以上より,測定部位によっては維持力が過大で測定不能になるが,Pの牽引とIMの加圧は義歯の維持力測定に適した方法であることが明らかになった.また,義歯にシーネを用いずにIMを直接加圧した値がPでの維持力と相関していることから,IMで相対的な義歯維持力の測定が可能であることが示唆された.
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