研究課題/領域番号 |
24792108
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
田中 晋平 昭和大学, 歯学部, 助教 (40365705)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インプラント / ジルコニア / 表面性状 |
研究概要 |
試料はナノジルコニアおよび純チタン(grade2)のディスク(直径2mm,厚さ1mm)とシリンダー(直径2.5mm,長さ6mm)に3%HF,66%H2SO4にて酸処理しRough surfaceを付与するものと鏡面研磨加工を付与するものを準備する. i) ナノジルコニアの表面性状の最適値の決定 a. 表面親水性の解析:チタン表面の濡れ性(親水性)は初期細胞接着に大きな影響を与え,インプラント周囲の骨形成不全を予防することが知られている.ナノジルコニアでも同様の効果が得られるかについて検討し,より触媒効果の高い表面性状を検索する.具体的にはH2OのContact angle及びH2O滴下時のディスク上の表面積を測定し評価した. b. 有機物の除去率の解析:鏡面研磨面やRough surfaceに対して,光触媒効果による表面の有機物の分解能をXPSを用いたESCA(Electron microscopy for chemical analysis)で分析・評価した. ii) in vitroにおける骨形成細胞の生物学的検索 細胞の接着,増殖,分化は材料への親和性を図る上で非常に重要な意義を持つ.近年,チタンにおいて機械研磨面と粗造面上を比較すると,研磨面では骨芽細胞の接着,増殖が良好であるのに対し分化能が遅れるが,粗造面では接着・増殖は劣るが分化が促進される起こることが報告されている.これは,ナノジルコニアでも同様であることが予想されるため,ラット骨髄由来の骨芽細胞をナノジルコニア,チタン上で培養し以下の実験項目を行い,Rough surfaceおよび鏡面研磨加工による活性の違いを検索した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,計画調書に記載したin vivoにおける細胞培養などの解析において,一定の成果が得られ,現在追試験による確認を行っている.これは,計画調書における一年目に予定された成果とほぼ同等の結果で,すでに学会において演題発表を行った.現在in vitroの予備実験を行っているため,概ね順調と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
in vivoにおける骨-インプラント結合能の解析:オッセオインテグレーション(骨―インプラント結合)能を生体力学的に評価することのできる除去トルク試験を行い,実際のインプラントの結合力を定量化する. a. 実験動物:ニホンシロウサギを用い,麻酔下にてインプラントの埋入術を行うこととする.術後には抗生剤,鎮痛剤を投与し,自由運動下にて飼育する.術後20日目より2日間にわたりテトラサイクリンを,術後40日目より2日間にわたり炭酸ソーダ溶液に溶解したカルセインを投与し骨にラベリングを行うこととする.術後15,30,60日目にエーテルの過量投与により安楽死させ,試験を行う. b. インプラント埋入術:インプラント埋入術における骨窩洞の形成には,インプラント手術用サージカルエンジンおよび手術用具(いずれも現有)を用いる.直径2.5mm,長さ6mmのスクリュー型インプラントを用い,チタンインプラント(Rough Surface)を埋入する群とナノジルコニアインプラント(Rough Surface)を埋入する群で比較検討を行う. c. 除去トルク値の計測:インプラントと骨のオッセオインテグレーションが破壊されるまでのトルク値を計測する. d. 骨―インプラント接触率の計測:脛骨からインプラント周囲組織を含めて切り出した試料を樹脂包埋後にVillanueva Bone Stain染色による切片とし,共晶点レーザー顕微鏡にて組織像のを取得する.さらに,解析ソフトImage Jを用い,骨とインプラントの接触率およびインプラント周囲骨周長辺りのテトラサイクリンおよびカルセインによる標識面の割合の計測を行う.また,試料の微少X線成分分析により既存骨および新生骨の成分を計測し,骨化度の指標とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で今後必要となる経費は以下の通りである. ①細胞培養とその解析に関する費用(培養器具,培地,血清,各種試薬など) ②動物実験とその解析に関する費用(動物の飼育,購入費用や麻酔,手術器具などの消耗品) ③培地となる材料の購入・加工に関する費用(比較対象となるチタンの購入・加工) ④汎用器具(マイクロチューブ,遠沈管,マイクロピペット,汎用試薬など) 研究経費は本研究の遂行に必要な備品および消耗品であり,その他の機器・備品は現有設備を用いることとする.また,一部の機器については有償にて借用することにより研究経費の削減を図る.その他,研究成果の発表に付帯する経費(旅費,投稿費用,英文校正費用)については妥当と考えられる費用を計上した.
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