研究課題/領域番号 |
24792109
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
舘 慶太 昭和大学, 歯学部, 助教 (90585671)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 骨再生 / BMP-2 / TGF-BETA1 / 骨再生療法 / 骨芽細胞 / 軟骨細胞 / 破骨細胞 / 骨再生療法 |
研究概要 |
Bone morphogenetic protein (BMP)は皮下や筋肉内に埋入すると異所性の骨化物を誘導する能力があり、骨の再建に有用と考えられてきた。すでに申請者らはTransforming growth factor-BETA1 (TGF-BETA1)がBMP-2 の誘導した異所性の骨化物形成を強力に促進することを見いだした。本研究の目的はTGF-BETA1とBMP-2 を併用することによりBMP の生体内活性を高め、骨の欠損を再建する新しい治療を確立することである。 平成24年度はBMP-2やTGF-BETA1を組み合わせてマウスの広背筋膜下に埋入し組織形成を時系列的に観察し、その結果、組織塊形成を構成する細胞成分として骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞の存在が確認された。TGF-β1 以外にもBMP-2 による骨形成を促進する物質はestradiol, Activin, 活性型ビタミンD3, Heparin, fibroblast growth factor(FGF)-23をBMP-2とともにコラーゲンスポンジに含ませ異所性骨を誘導させ、より効率よく骨形成がおこる条件をマイクロCT用いて骨量を量り比較検討した。14 日後形成された異所性骨をマイクロCTにより解析し、より効率のいい骨誘導が起こる条件を検討した結果どの因子もあまり促進作用は認められなかった。しかしFGF-23ではTGF-β同様に骨形成促進作用がみられた。今後はFGF-23の骨形成誘導機序も検討していく。またBMP-2単独群とTGF-BETA1同時添加群から形成された組織塊(5日目)をマイクロアレイで比較したところ、腫瘍、炎症時に発現するS-100タンパク、そしてTNF-αの発現に優位差があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度のBMP-2とTGF-β1以外の組み合わせの検討としては、TGF-BETAのかわりにHeparin, fibroblast growth factor-2, -4, activin、そしてFGF-23を用いて胃所性骨実験を行ったところ、FGF-23がTGF-BETA同様に異所性骨形成促進的に働く事が発見され新たな知見になった。 また異所性骨形成促進を引き起こす原因遺伝子の検討としてはまた組織塊の解析により、腫瘍、炎症時に発現するS-100タンパク、そしてTNF-αの発現に優位差があることがわかった。これらの遺伝子は過去にいくつか骨形成との関連の報告はでているが詳細は不明であるため、骨代謝との関連性を調べる必要がある。 やや遅れているとした理由は遺伝子導入した前駆細胞を用いた骨再建ではS-100タンパクとTNF-αが異所性骨との関連性が認められたため、これらの遺伝子のウイルスベクター作成し、未分化細胞への導入を試みるも、遺伝子の導入率が悪く効果が出ない。またコラーゲン以外の担体の検討をおこなっているがアテロコラーゲンゲル、アルジネート等試したがいずれも胃所性骨形成は認められたものの、コラーゲンに比べ形成量が少なかったので更なる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
①FGF-23に対する異所性骨形成促進作用の機序の解明: FGF-23と骨代謝との関連性を骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞の遺伝子発現等を調べる。またFGF-23による異所性骨形成の機序がTGF-BETA1によるものと同じ機序かどうかを組織切片やmicroCT等を用い解析する。 ②S-100タンパクと骨形成の関わりの解明: S-100タンパクと骨代謝との関連性を骨芽細胞、軟骨細胞、破骨細胞の遺伝子発現等を調べる。また S-100タンパクと異所性骨がどのように関わっているのかを各日数の組織塊の遺伝子解析をしどのタイミングでS-100タンパクが顕著に関わっているかを解明する。また引き続きS-100タンパクをウイルすベクターに入れるがベクターの種類をかえて導入効率のいいものを検討する。 ③遺伝子導入した前駆細胞を用いた骨再建: 初期組織塊を構成する細胞にウィルスベクターやプラスミドを用いて平成22年度に行ったマイクロアレイで着目した複数の候補遺伝子を各種別々に過剰発現させその細胞(1x106個)をコラーゲンゲルにまぜマウスの腹部に皮内注射する。そこに形成される異所性骨を時系列的、組織学的(組織切片等)、遺伝子的に比較検討する。候補遺伝子の過剰発現させて骨形成に変化がない場合は、初期組織塊を構成する細胞をsiRNAを用いて遺伝子を発現抑制し、その細胞を用い過剰発現細胞と同様の実験を試みる。 ④サル、ビーグル犬への骨欠損再建療法の検討:サル、ビーグル犬の歯槽骨に骨欠損を作り、そこにBMP-2やTGF-β1を含むスポンジを埋入する。その後の骨欠損の状態を経時的に観察し効率の良い条件を検討する。また同動物の後背筋膜下にBMP-2やTGF-β1を含むスポンジを埋入、異所性骨を誘導し、その異所性骨を粉砕し自家骨として歯槽骨の骨欠損に移植し骨再生を試み、自家骨移植による骨再建を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費 : 本研究課題は以下の消耗品を必要とする。 1. 個体レベルおよび細胞レベルの実験系が必要なため、実験動物、培養器具、培地・血清、サイトカインを必要とする(計1,500千円)。 2. 遺伝子解析のための遺伝子組換え試薬、シークエンス解析試薬、マイクロアレイチップ、遺伝子発現解析試薬(PCR用試薬等)を必要とする(計500千円)。 3. 組織解析のための各種試薬、in situ hybridizationのための各種試薬、免疫染色のための各種試薬(抗体を含む)を必要とする(計550千円)。 旅費・謝金・その他 : 本研究課題発表のための学会参加費用(日本骨代謝学会、日本補綴歯科学会、米国骨代謝学会計250千円)、および論文作成のための費用(論文の校閲および別刷り、計200千円)を必要とする。
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