Bone morphogenetic protein (BMP)は皮下や筋肉内に埋入すると異所性の骨化物を誘導する能力があり、骨の再建に有用と考えられてきた。しかし臨床的に必要な骨量を誘導するには活性が弱く大量のBMPを用いるため、コスト面等の問題が実用化の大きな障壁となっている。すでに申請者らはTransforming growth factor-β1 (TGF-β1)がBMP-2の誘導した異所性の骨化物形成を5倍に促進することを見いだした。本研究の目的はTGF-β1とBMP-2を併用することによりBMPの生体内活性を高め、骨の欠損を再建する新しい治療を確立することである。平成26年度はBMP-2単独群とTGF-BETA1同時添加群から形成された組織塊(5日目)をマイクロアレイで比較したところ、細胞外マトリックスDel-1(別名Edil3: EGF-like repeats and discoidin I-like domains 3)の発現に優位差があることがわかった。そこで破骨細胞とDEL-1の関連を調べることにした。マウスマクロファージ様破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞をRANKLで刺激し、破骨細胞に分化させたところ、刺激前と比較してDel-1のmRNAの発現が著しく上昇していた。そこでRAW細胞にRANKLで刺激すると同時にDel-1を加えて刺激したところ、濃度依存的に破骨細胞形成を促進した。Del-1で刺激したRAW細胞は破骨細胞分化マーカーも上昇していた。SiRNAによってDel-1の発現を抑制したRAW細胞にRANKL刺激したところ破骨細胞数は減少していた。 Del-1とともにIL-17Aを加え破骨細胞分化させたところDel-1の破骨細胞分化促進作用が抑制された。IL-17Aを破骨細胞前駆細胞に直接刺激すると破骨細胞分化を抑制するという報告がある。つまりこのことによりDel-1の破骨細胞促進作用はIL-17Aを抑制することによって破骨細胞分化を促進していることが示唆された。 またTGF-β1はDel-1を介して破骨細胞分化を抑制して骨形成促進をおこなっている可能性が示唆された。
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