研究課題
インプラント治療において、審美性獲得のため、しばしばインプラント周囲上皮下結合組織移植が行われる.近年,上皮下結合組織移植部位直下の経年的歯槽骨増生の事例がいくつか臨床報告されている.また、豊富な上皮下結合組織の存在は歯槽骨増生術の予知性を向上させると臨床的に考えられている.しかし、その細胞生物学的機序は不明である.その機序が解明されれば,インプラント周囲組織増生術の発展にとって有益な情報となる.本研究の目的は,上皮下結合組織由来の線維芽細胞が骨芽細胞および骨膜細胞の機能発現に与える影響を細胞培養試験的に調べ、上皮下結合組織が歯槽骨増生へ寄与する細胞生物学的機序の一端を示すことである.ラット頭蓋骨由来初代継代骨芽細胞をポリスチレン培養皿上に播種し,口蓋歯肉由来初代継代歯肉線維芽細胞と,底面に直径0.4μmの多孔を有するカルチャーインサートを介した非細胞間接触環境下で,もしくはそれを介さずに混合させた状態で,骨分化誘導培地中にて共培養した.対照培養として,骨芽細胞および歯肉線維芽細胞それぞれの個別培養を行った.培養骨芽細胞および歯肉線維芽細胞の骨基質関連表現型発現レベルならびに細胞間相互作用をフォン・コッサ染色,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応分析を用いて評価した.その結果,歯肉結合組織移植片直下の経年的な骨増生機序として,歯肉線維芽細胞は,非細胞間接触相互作用により,FGF-1および-18を傍分泌し,近傍の骨芽細胞のFGF-1および-18の自己分泌を促進させ,骨芽細胞の骨基質産生能を亢進させること,また,同様の相互作用により骨膜細胞の機能発現を亢進させることが示唆された.本研究結果により、結合組織移植片は移植片中の線維芽細胞から放出されるFGF‐1および‐18を介して、直下に存在する歯槽骨を増生し得る可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画どおりの進度で、歯肉線維芽細胞の骨芽細胞機能への影響を細胞生物学的に検索することができているため、順調に進展していると考えることができる。
細胞培養試験と細胞増殖活性試験および網羅的タンパク質検出装置を用いて、歯肉線維芽細胞が骨膜細胞機能(増殖能、基質産生能および石灰化能)に与える影響を検証し、また両細胞間に生じる細胞間インタラクションの解析を行い、前年度の結果と併せて国際学会にて発表し、英文雑誌に原著論文投稿する。
最低12ウェル24プレート分の実験を行うことが可能な消耗品の必要性があり、細胞採取のための実験用ラット(3,000円/3匹)は24匹、細胞培養液、生物学的解析試薬および周辺消耗材料は併せて約700,000円、マルチプレックスサスペンションアレイシステム専用プレートの価格は約400,000円が見込まれ、小計で1,124,000円となる。また、国際学会発表を予定しており、旅費として約300,000円がそれぞれ見込まれ、合計1,424,000円の予定である.
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
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