研究概要 |
具体的内容:咬筋痛覚過敏の発症機構を解明する目的で、咬筋痛覚過敏モデルラットを用い、P2X3受容体と IL-1βの関係をより詳細に検討した。材料・方法としてラット咬筋の電気刺激(10Hz、10V、30分間)による持続的咬筋収縮を11日間連日行い、咬筋への圧痛刺激に対する痛みの閾値を測定した。さらに、痛み発症時、ELISA法を用いて咬筋のIL-1β量の測定、および咬筋へ10g, 200g, 300gの圧刺激後のATP放出量の変化について解析を行った。また、刺激側咬筋への P2X3, 2/3拮抗薬投与後の圧痛閾値の変化およびIL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)の連日投与後の三叉神経節細胞におけるP2X3受容体 の発現を免疫染色学的に観察した。結果として刺激モデルラット7日目に圧痛閾値はsham群に比較し有意に低下した。7日目における持続的咬筋収縮後のIL-1βおよび300g刺激後のATP放出量はsham群に比較して有意に上昇した。また刺激側咬筋へのP2X3, 2/3拮抗薬 投与により圧痛閾値の低下が抑制された。 意義:持続的咬筋収縮による痛覚過敏は臨床的に多くみられ、本研究により咬筋痛覚過敏発症メカニズムの一端を解明することを可能にすると思われる。 重要性:P2X3, 2/3拮抗薬およびIL-1受容体拮抗薬は持続的咬筋収縮による痛覚過敏に有効な治療薬になる可能性が考えられる。 研究実施計画書との比較:実験モデルの作成、行動学的実験は計画書通り実行できた。バイオルミネッセンス解析によるATP濃度の測定では圧依存的に咬筋への機械刺激を行いATP濃度を測定したが、圧刺激(5g, 10g, 20g, 40g)後では刺激群間で有意な変化がなかったため圧刺激を10g、200g、300gに変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット筋性疼痛モデルの作製は予定通り実行でき、筋の圧刺激に対する逃避反応閾値(行動学的実験)を測定することができた。ELISA法を用いたインターロイキン解析では筋痛発症時のIL-1β、IL-6、IL-17を検出する予定であったがIL-6、IL-17は有意な差がなかったため、本研究から除外した。バイオルミネッセンス解析によるATP濃度の測定では灌流液中(クレブス溶液)に取り出し筋標本を入れ、圧刺激(5g, 10g, 20g, 40g)後、ATP濃度を測定したが有意な差が認められなかったため、圧刺激を10g、200g、300gに変更した。行動学的実験ではP2X3, 2/3拮抗薬およびIL-1受容体拮抗薬の効果も観察できることができ、計画書以上に進展している。その他は概ね研究計画書通り進展している。
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