歯科用レーザーによる抜歯窩創傷治癒促進効果に関する研究において半導体レーザーでは基礎的研究の報告が散見されるが、炭酸ガスレーザーでは臨床が先行し組織学的な基礎的報告はほとんどなかった。それは炭酸ガスレーザーの光は水分に吸収されやすい特性より粘膜組織、血液中にほとんどのエネルギーが吸収され骨組織等の深部に影響が及ばないとされるからである。 本研究ではラットを用い抜歯窩治癒過程における炭酸ガスレーザーの低出力レベルレーザー治療(LLLT)照射による効果が病理組織学的に有用であるのか、またそれが直接的または間接的な効果なのか検証することを目的とした。 実験は臨床に準じてラット上顎第一臼歯の抜歯→抜歯窩表層血餅の血液凝固(人工的痂皮形成)のための照射→抜歯後1日目に創傷治癒促進効果を期待したLLLT照射を行った。対照群はレーザーを使用せず圧迫止血により血餅を形成した。 LLLT照射群では術後3日に骨リモデリングの初期に出現する破骨細胞が抜歯窩浅層~中層付近に多数確認された。術後5日には破骨細胞の出現部に一致した架橋状の新生骨形成を認めた。これは炭酸ガスレーザーの光が水分に吸収されやすく、光浸透長0.05mmであるのとほぼ一致する。つまり抜歯窩浅層~中層で認める多数の破骨細胞の遊走、出現を促し、その後の特異な架橋状の新生骨形成、それに伴う歯槽骨頂部の陥凹が抑制されたというLLLT照射により間接的に骨代謝促進効果が働いたと考えられる。 これまでに基礎的な報告があった半導体レーザーでは対照群と比較して術後2日に線維芽細胞の有意な増殖、術後3日での抜歯窩窩口部の血管の拡張と新生、7日目以降では広範囲にわたる新生骨梁の早期の形成を認めたとの報告がある。これは炭酸ガスレーザーの抜歯窩へのLLLT照射は半導体レーザーと類似して抜歯後初期の骨代謝促進効果を獲得するのに重要な要素であると考える。
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