【目的】インプラントを可撤性部分床義歯(RPD)の支持に利用したImplant Supported Removable Partial Denture(ISRPD)においてインプラントの負担については明らかではない.そこでISRPDの三次元有限要素解析により,インプラントサイズ,骨質およびインプラントと義歯の接触状態がISRPDの支持組織に及ぼす影響を検討した. 【方法】有限要素モデルは両側下顎第二小臼歯,第一大臼歯および第二大臼歯欠損を想定した.支台歯である第一小臼歯にはRPIクラスプを設定し,インプラントを埋入していないRPDモデルと第二大臼歯部にインプラントを埋入したISRPDモデルを作成した.インプラントは長さ6mmとし,直径5mm(WP),3.75mm(RP),3.3mm(NP)の3種類とした.インプラントと義歯床の接触状態は,非荷重時に接触しているもの(C)とスペースを設け咬みしめ時に接触するようにしたもの(S)の2種類とした.また,骨質は軟らかいもの(500MPa)と硬いもの(1370MPa)の2条件とした.荷重条件は,閉口運動時の筋収縮を考慮し両側での総荷重量が400Nとなるように設定した.支台歯と支台装置,義歯床と粘膜および義歯床とインプラントの接触界面にgap要素を介在させて接触解析を行った. 【結果と考察】ISRPDモデルではすべての条件で通常のRPDモデルより義歯床の沈下と粘膜の負担量が減少していた.インプラント周囲の骨のひずみはインプラント直径の小さいもの,骨質の軟らかいもの,インプラントと義歯床が非荷重時に接触しているもので大きくなり,生理的限界を超えているものもあった.以上より,義歯の沈下や粘膜負担軽減にサイズの小さなインプラントも有効であるが,骨質やサイズによっては過重負担となる可能性があるため,インプラントと義歯床にスペースを設けるなど接触状態を考慮する必要性が示唆された.
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