高齢化の進行により骨粗鬆症の患者は増加し,それに伴いビスフォスフォネート系薬剤(以下BP薬)の服用による顎骨壊死が多く報告されている.BP薬が顎骨壊死を起こすことは知られるようになってきたが,BP薬がインプラントへどのように影響をおよぼすのかは報告されていない.今回,我々はBP薬がインプラントのオッセオインテグレーションに及ぼす影響を,インプラント周囲骨形成の観点から研究を行った. 日本白色種ウサギを用い,実験群にはゾレドロン酸水和物を静脈内投与し,コントロール群には何も投与しなかった.左側下顎骨・左側脛骨に各1本の合計2本を埋入した.1ヵ月の治癒期間の後にμCT撮影後にレジン包埋を行いトルイジンブルーで染色し組織学的観察と組織形態学的計測を行った. インプラント/骨接触率は,脛骨において実験群でコントロール群と比較して顕著に少なく有意差があり,下顎骨では有意差は認められなかった. 脛骨では実験群・コントロール群ともにインプラント頸部や先端部での新生骨形成が多く,中央部の骨形成量は少量しか認められず,下顎骨では実験群・コントロール群ともにインプラント表面全体的に新生骨形成が観察された.インプラント周囲の骨形成は,BP薬を投与していない時に活発な形成が認められた.実験群・コントロール群ともに脛骨と下顎骨で新生骨形成の様相が異なるためインプラントへの骨形成を解明するためには下顎骨を観察することが重要である.また,オッセオインテグレーションが成立した後であってもBP薬はインプラント周囲骨へ影響を及ぼすことが認められたとから,オッセオインテグレーションしたインプラントにおいても経過を注意深く観察する必要性がある.
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