研究課題/領域番号 |
24792141
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳一 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50530490)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歯学 / 組織工学 / 再生歯学 / 骨 / 細胞集合体 |
研究概要 |
初年度の平成24年度では、まず温度応答性高分子(pNIPAAm)ゲルを応用したシステムを用いて骨髄間葉系幹細胞(BMSC)のみから構成される細胞集合体の作製法ならびに培養法の確立を試みた。その結果、半球状の凹みを付与したpNIAAmゲルにBMSCを播種することで、球状のBMSC集合体が作製可能であることが分かった。また、この集合体を骨芽細胞分化誘導培地を用いてシーソー型の振盪機上で培養すると経時的に集合体のサイズが大きくなったことから、細胞を生存させた状態で球形を維持したままの培養が可能であることがわかった。 細胞集合体内部では、中心部の細胞ほど低酸素、低栄養状態に曝されていると考えられたことから、集合体内部の環境を評価することを目的として、異なる大きさの集合体中心部の酸素分圧を測定した。その結果、集合体の直径が増加するにしたがって、中心部の酸素分圧が減少していることが明らかとなった。さらに、集合体の薄切切片に対して低酸素誘導因子および血管内皮細胞増殖因子の免疫蛍光染色を行ったところ、集合体を構成するBMSCは、それぞれの因子を発現していることが分かった。また、ヘマトキシリン・エオジン染色から集合体中心部の細胞の核が消失していることが分かった。以上の結果より、細胞集合体の中心部の細胞は、低酸素、低栄養状態に曝されており、活性を失っていることが明らかとなった。 本年度では、細胞集合体を用いた骨移植材を開発するうえでの基盤技術を確立することに成功した。さらに、集合体内部の環境を明らかにすることで、本研究課題を達成するための有用な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は細胞集合体を用いた新規骨移植材の創製を目的としており、初年度ではBMSCを用いた細胞集合体作製技術とその培養法の確立、および集合体内部の環境を明らかにすることを計画していた。研究実績の概要に上述した通り、pNIPAAmゲルを用いることで球形のBMSC集合体を作製することに成功し、また、シーソー型振盪機を用いることで、その長期培養に成功した。さらに、細胞集合体について組織学的検討を行うことにより、低酸素状態といった内部環境を明らかにした。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、細胞集合体内部の基質分布に関する検討、および骨移植材としての有用性を検討する。まずは、細胞集合体内における軟骨基質と石灰化基質の定性、定量評価を行う。具体的には、経時的な集合体試料を作製し、組織学的検討を行うことで基質分布の定量評価が可能となる。また、微小X線回析装置を用いることで、基質の定性評価が可能になる。次に、細胞集合体の骨移植材としての有用性を検討することを目的として、骨欠損動物モデルを用いた実験を行う。ラットの頭蓋骨の一部を削除した骨欠損モデルに骨系誘導をした細胞集合体を移植し、その骨誘導能をマイクロX線CTや組織学的検討を行うことで評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においても研究遂行に係る消耗品は、上記の研究計画に則り必要性を吟味し効果的に使用する。具体的には、次年度はin vitroとin vivo両方の実験系を含むため、ともにその評価方法として同様の手法を取り入れることで、使用抗体の共有や希釈割合の決定を行うことができ、研究費の使用効率化が可能となる。また次年度では、多くの研究成果が得られると予想されることから、成果発表(学会発表、論文発表)に係る費用は、平成24年度と比較して多く使用することを計画している。
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