研究課題/領域番号 |
24792144
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
碇 竜也 九州大学, 大学病院, 助教 (70380467)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 再生医療 / 幹細胞 |
研究概要 |
唾液腺の発生は、発芽、分枝形成、最終分化を経て成熟唾液腺となる。これまでに分枝形成を促進する因子の一つとして肝細胞増殖因子の関与を示した。また、顎下腺原基から得られた単一細胞から組織再構築させることが出来ることを証明した。さらに、それらの再構築組織は、唾液腺最終分化マーカーとしてアクアポリンの発現も認めた。これらの現象は、唾液腺組織の中には幹細胞とも言うべき細胞群が含まれていることを示している。唾液腺幹細胞の存在はこれまでにも様々な意見が論じられているが、未だにその証明はなされていない。一方で、再生医療を目指す上では、組織幹細胞の同定やその分子機構の解明は必須の条件となる。 悪性腫瘍においては癌幹細胞の存在が同定され、様々な研究が行われているのが現状である。当科では唾液腺癌幹細胞の制御に Brachyury が中心的制御因子として関わっていること、唾液腺組織幹細胞の存在の可能性を示唆してきた。そこで、この Brachyury に着目し、唾液腺組織幹細胞の同定を目的に、唾液腺組織における Brachyury の発現や動態についての解析を行った。各胎齢における Brachyury の発現動態について 、Western blotting で解析を行った。結果、胎齢 13.5 日に急激な発現増加を認め、以後急速に発現の減少を認めた。さらに、遺伝子レベルでも Real-time RT-PCR で同様の発現動態を確認した。この発現動態は、Brachyury が何らかの作用を及ぼしていることが推察された。また、Brachyury の下流遺伝子である SOX2 やBtbd7 も同様の発現動態を示した。そこで Brachyury を siRNA でノックダウンすると器官培養において唾液腺の分枝形成が抑制された。下流遺伝子である SOX2 や Btbd7 の発現も抑制されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学病院口腔外科所属のため、臨床や学生教育、管理運営に費やす時間が比較的多く、実質的な研究時間がやや不足していた。
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今後の研究の推進方策 |
研究 3) side population 法による唾液腺組織幹細胞の分離 side population 法を用いてマウス唾液腺幹細胞の分離を行い、分離した細胞群の遺 伝子解析を行うことで、本研究で着目した Brachyury や下流の遺伝子発現についての 解析を行う。 研究 4) 組織再構築モデルを用いた唾液腺幹細胞の検索 将来的な唾液腺再生医療を考えると、周囲間葉組織のみならず再生力を持った唾液腺 幹細胞の分離・同定、さらにはその後の in vivo あるいは in vitro における組織再 構築が必須となる。そこで、唾液腺原基から得られた細胞群を flowcytometry にて細 胞を分離し、(2) の唾液腺再構築モデルを用いて組織再構築能を判定する。また、各 細胞群について BudR の取り込み、分化マーカーの免疫染色、Real time PCR による 特異的遺伝子発現をも合せて検討する。 研究 5) 放射線照射マウス顎下腺への幹細胞移植と再生組織の生体内における機能評価 唾液腺再生医療の発展には、増殖・分化させた再構築組織を生体内へ移植し、その移 植片が生体内で機能するかどうかが重要である。そのため、移植後の細胞動態やアミ ラーゼ分泌などの機能を追求することが必要である。唾液腺の再生や分化を理解するモデルとして、放射線照射後の唾液腺不全マウスがある。作製した唾液腺不全マウスの顎下腺に唾液腺幹細胞を移植することで、その後の組織定着、並びに機能について評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の平成24年度実験計画として、研究 1) マウス胎仔唾液腺における Brachyury の発現動態の解析、研究 2) Brachyury のノックダウンによる形態的変化、遺伝子発現の変化、研究 3) side population 法による唾液腺組織幹細胞の分離を行う予定であったが、研究 3) を当該年度に行うことが出来なかった。その分、平成25年度への研究費が生じたため、本年度はこの研究 3) に加え、当初の実験計画である研究 4) と研究 5) を行っていく予定である。また、本年度中には研究費に計上している研究成果投稿を行う予定である。
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