研究課題
歯科インプラントのフィクスチャーが脱離する原因の1つであるインプラント周囲炎に着目し、フィクスチャー(チタン合金)の局部的腐食機序の解明を試みた。本年度は、硫化物の濃度によるチタンの腐食挙動と歯周病原性細菌(P.gingivaris)の培養によるチタン合金の腐食挙動をin vitro試験により評価した。0.013M、0.05M、0.10Mの硫化ナトリウムを含む溶液(MQS)に純チタンを浸漬し、1、3、7日間静置した。浸漬前後の色彩から変色度、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察、X線光電子分光分析(XPS)による表面化学状態を調べた。参照試料として、硫化ナトリウムを含んでいない超純水(MQ)中でも同様に各項目を調べた。MQに浸漬したチタンは7日浸漬しても色差は1.5以下であり変色が認めれなかったが、MQSに浸漬したチタンは浸漬時間が長くなるにしたがって色差が大きくなった。硫化物の濃度は高い方が変色程度が大きくなることが明らかになった。SEM観察から、MQSに浸漬したチタンはわずかに粗造になっていたが、明確な局部腐食や全面腐食は認められなかった。XPS分析によると、MQSに浸漬したチタンでは色差が大きくなり変色が進行するにしたがって、Ti2pスペクトルでは金属由来のピークが減少し、酸化物由来のピークのみとなった。これらのことから、硫化物濃度および浸漬時間によって純チタンの変色は異なり、その酸化反応による酸化膜の生成が変色の原因であることが明らかとなった。
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Tissue Engineering Part C Methods
巻: 20 ページ: 838-850
10.1089/ten.TEC.2013.0334