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2012 年度 実施状況報告書

新規歯科矯正用マイクロインプラントシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24792155
研究種目

若手研究(B)

研究機関日本大学

研究代表者

谷本 安浩  日本大学, 歯学部, 准教授 (40312045)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード歯科矯正用アンカースクリュー / ポリグリコール酸 / チタン / 機械的性質
研究概要

本研究の目的は、歯科矯正用アンカースクリューとして従来用いられているチタン(Ti)の代替材料に、ポリグリコール酸(PGA)などの生体吸収性材料やリン酸カルシウム系材料を適用することで新規な歯科矯正アンカースクリューを開発することである。本年度においてはPGAの特性評価を行ない、従来のTiと比較することでPGAのアンカースクリュー応用への可能性について検討した。本研究ではPGAとTiの2種類を試験対象とした。三点曲げ試験により得られたPGAの曲げ強度および曲げ弾性係数はそれぞれ201.6±2.5MPaと7.4±0.1GPaであり、Tiと比較して低い値を示した。またダイナミック超微小硬度試験により得られた微小荷重-押し込み深さ曲線からTiについてはクリープが認められなかったが、PGAについてはクリープ現象が確認できた。さらにPGAのダイナミック硬さおよび弾性係数はそれぞれ32.0±0.8と8.2±0.1GPaであり、Tiの値(174.7±5.3と112.2±9.8GPa)に比べて低い値を示した。以上の結果から、PGAは従来のアンカースクリューの素材であるTiと比較して、曲げ特性およびダイナミック特性ともに低い値を示した。実際の矯正治療期間中にはアンカースクリューに持続的な曲げモーメントが負荷されるために、アンカースクリュー素材の曲げ特性は非常に重要である。PGAはTiに比べて低い曲げ特性を示したが、一般的に報告されているヒト皮質骨の曲げ特性の値とは近似しており、PGAに曲げモーメントが負荷される際、歯槽骨と協調して変形するものと推測され、歯槽骨の破壊が起こりづらいと考えられる。一方、アンカースクリューの表面硬さに起因する機械的摩擦はアンカースクリュー埋入時のトルクに大きな影響を及ぼすため、PGAのダイナミック硬さについては今後改良する必要があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では従来の歯科矯正用アンカースクリュー材料であるチタンの代わりに、ポリ乳酸やポリグリコール酸(PGA)などの生体吸収性高分子材料、あるいはこれらに骨伝導性に優れるハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系材料を複合化したコンポジット材料をアンカースクリューに適用することで生体内に吸収される新規な歯科矯正アンカースクリューシステムを開発することを目的としている。本年度の研究期間において、生体吸収性高分子材料の中でも高強度を有するPGAの試験体を作製し、アルキメデス法による密度などの物理的性質、三点曲げ試験による曲げ特性やダイナミック超微小硬度試験によるダイナミックス硬さなどの機械的性質などの特性評価を行なった。また従来のアンカースクリュー材料である純チタンの物理的および機械的性質との比較・検討を行なうなど、本年度において研究を遂行する際の当初の目標を達成することができたと考えている。

今後の研究の推進方策

歯科矯正治療において、患者に低侵襲な新規歯科矯正用アンカースクリューシステムを開発するためには、機械的性質および生体適合性に優れるアンカースクリュー体の材料設計・開発を行なう必要がある。近年、再生医療分野において、移植する生体部位に人工生体デバイスが効果的に適合するように、ポリグリコール酸(PGA)やポリ-L-乳酸(PLLA)などの生体吸収性高分子材料と骨伝導性を有するハイドロキシアパタイト(HA)などのリン酸カルシウム系材料とを複合化させたコンポジット材料の開発研究が行なわれている。これらの生体吸収性高分子/リン酸カルシウムコンポジット材料は生体吸収性高分子材料単体と比較して、機械的性質やアパタイト生成能に優れることが報告されている。そのため今後は、PGAやPLLAの機械的性質および生体適合性を向上させるために、PGAやPLLAにHAを添加したコンポジット体を作製する。また作製したコンポジット体の機械的強度試験に加えて、骨芽細胞様細胞試験や疑似体液浸漬などの生体適合性試験を行うなど、さらに研究を推し進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度においては、作製した試験体の機械的強度試験や生体適合性試験などのキャラクタリゼーションを行なう。そのために試験体作製や物性試験に使用する金型材料、細胞培養試験で使用する細胞培養キット、疑似体液を調製するために使用するガラス器具や試薬の消耗品などの物品費が必要である。さらに学会での研究成果発表のための旅費および研究成果をまとめた論文投稿に係る費用(英文校正料、論文別刷り代)が必要となる。以下に予定している各費目の明細を記載する。
[物品費]細胞培養キット一式30万円、実験用金型20万円、ガラス器具一式10万円、試薬5万円、OA消耗品5万円、[旅費]学会発表10万円、[その他]英文校正料10万円、国際Journal誌論文別刷り料10万円

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Mini-implants in the anchorage armamentarium: new paradigms in the orthodontics2012

    • 著者名/発表者名
      Masaru Yamaguchi, Toshihiro Inami, Ko Ito, Kazutaka Kasai, Yasuhiro Tanimoto
    • 雑誌名

      International Journal of Biomaterials

      巻: 2012(394121) ページ: 1-8

    • DOI

      doi:10.1155/2012/394121

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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