研究概要 |
本研究ではフッ素徐放性、歯質接着性の機能を付与したコンポジットレジンの開発を目的としている。昨年度はフッ素徐放性コンポジットレジンを試作し、フッ素徐放性モノマーの添加量が機械的強さやフッ素徐放量に及ぼす影響を検討した。本年度はフッ素イオンの抗菌機能に着目し、フッ素イオン濃度の異なるBrain Heart Infusion(BHI)溶液中でう蝕原生菌を培養し、その抗菌性について検討した。 菌体にはStreptococcus mutans JC2(S. mutans)およびStreptococcus sobrinus SL1(S. sobrinus)を用い、BHI培養液にて37℃、18時間培養後、菌数を調整して使用した。NaFを用いてフッ素イオン濃度(11, 23, 45, 90, 181, 362, 724, 1448 ppm)の異なる8種のBHI液体培地を調整し、この溶液中に菌体を播種し、37℃にて18時間インキュベーションした後、培地の濁度を分光光度計にて測定して菌増殖に伴う濁度の変化からMIC(最小発育阻止濃度)を決定した。また、殺菌性については菌体を含む各種フッ素イオンの濃度のBHI溶液をMitis Salivarius寒天培地にて播種後37℃、48時間培養し、菌集落を測定することで決定した。 その結果、S. mutans, S. sobrinusのフッ素イオン濃度のMICはともに362 ppmであり、殺菌性を示すには362 ppm以上必要となることが明らかになった。試作したフッ素徐放性コンポジットレジンのフッ素徐放量は1日0.1~0.9 ppmであり、362 ppmのフッ素イオンを溶出するのは現実的に不可能であるため、今後はフッ素の機能のうち0.05~1 ppmのフッ素濃度で期待される歯質強化作用に着目しながら今後の研究を進めていく。
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