研究課題/領域番号 |
24792157
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田巻 友一 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (10609457)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / ヒト抜去歯 / 組織形成能 / 歯小嚢幹細胞 / 歯乳頭幹細胞 / 歯根膜幹細胞 / 歯髄幹細胞 / 骨髄幹細胞 |
研究概要 |
本研究は、ヒト抜去歯由来の4種類の幹細胞と発生由来が異なるヒト腸骨由来骨髄幹細胞の幹細胞特性を明らかにすることを目的とした。本年度は、in vivoで各種幹細胞の有する組織形成能について重点的に解析を進めた。免疫不全マウス皮下にハイドロキシアパタイト(HA)と各種幹細胞を移植し、16週間後に摘出し脱灰、固定後に切片を作製した。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色とマッソン・トリクロム(MT)染色の結果、各種幹細胞で硬組織形成がみとめられた。さらに移植したヒト幹細胞が硬組織を形成したか否かを特定するためにヒト特異的抗体である抗ミトコンドリア、ビメンチン抗体を用い、免疫染色を行った。その結果、硬組織およびHA周囲に陽性反応を示した。また骨系マーカーである抗DSP、BSP抗体に陽性反応を示した。一方、controlとしてHA単独の移植群では硬組織形成は生じなかった。以上の結果より、移植したすべての幹細胞は硬組織形成能を有することが明らかになった。 今後、形成された硬組織が骨または象牙質、セメント質であるかまたは幹細胞の組織由来を反映しているのかを明らかにしていく予定である。 増殖能評価においては、異なる継代数でテロメアーゼ活性測定を行った。その結果、継代数3の時点ではヒト抜去歯幹細胞は、骨髄幹細胞よりも高く、継代数15になるとその差が最大7倍と増大した。 以上のことから、研究目的に記載した目的、意義を着実に達成していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2大テーマである幹細胞の有する「組織形成能」と幹細胞のホーミング機能に関連すると考えられる「増殖能」についての目的の達成度はどちらも順調に達成していると考えられる。つまり、移植プロトコールが確立され、組織形成能に再現性が確認できた。移植プロトコールについては、スキャフォールドとしてHA/β-TCPが適当であり、賦形性を付与すると共に移植細胞の散在の防止を考慮し、I型コラーゲンゲルを併用した。移植期間については8、12、16週と経時的に組織形成を評価した結果、移植後16週で硬組織形成率が上昇することが明らかとなった。骨髄幹細胞移植群においてはHE、MT染色においてHA周囲に層板状の骨様組織形成が確認されている。その上、ポジティブコントロールとして用いているヒト下顎骨組織のサンプルと比較した際には類似した構造が確認された。また、顕微鏡下所見では歯小嚢、歯乳頭幹細胞移植群は他の幹細胞群より多くの硬組織を形成する傾向がみとめられている。今後は組織の面積を測定し、硬組織形成の定量化を行い、その後統計処理を検討している。幹細胞の有する増殖能については、テロメアーゼ活性測定により主な増殖機構が把握できた。また、フローサイトメトリーによる細胞周期解析を行った結果、ヒト抜去歯幹細胞は骨髄幹細胞よりG2/M期に移行している細胞が多く、G0/G1期の細胞は少なかった。この傾向は継代数15でもこの傾向は維持されていた。さらに、老化細胞特異的に染色されるX-GAL染色による細胞老化評価を行った結果、ヒト抜去歯幹細胞は骨髄幹細胞よりも染色性が低かった。以上の結果を考察すると、骨髄幹細胞と比較してヒト抜去歯幹細胞の高い増殖活性が維持されている要因は、テロメアーゼ活性に依存していることが示唆された。 以上のことを総括的に判断すると、当初の目的である幹細胞の特性評価は順調に達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、24年度で得られた結果を基にしてさらなる詳細な評価を行っていく予定である。今後は移植を行った結果、形成された硬組織は由来組織に反映した特徴を有しているか否かを解析評価する。研究手法としては免疫染色を行い、骨、象牙質マーカーである抗DSP、BSP、osteocalcin、osteopontin抗体を複数組み合わせて各種ヒト幹細胞移植群の陽性反応パターンを比較評価する。さらにポジティブコントロールとしてヒト抜去歯および骨組織の切片標本を用いて、移植により形成された硬組織が骨、象牙質、セメント質に類似しているかを評価する予定である。その上、顕微鏡下にて1視野における硬組織形成量を画像解析にて定量化し、統計処理を行うことを検討している。 また、分離した幹細胞における由来組織の特徴を評価するため、これらの幹細胞の由来組織に特異的な遺伝子として知られるperiostin, PLAP-1などの歯周組織関連マーカーをターゲット遺伝子として、RT-PCRおよびquantitative RT-PCR、western blottingを用いた遺伝子発現プロファイルの比較解析を行う。 増殖能評価については、増殖シグナルまたは細胞遊走能を評価し、テロメアーゼ活性測定の結果との相関性を検討する。増殖シグナル解析においては、サイクリン依存性キナーゼcdk2など細胞周期制御シグナル経路をwestern blottingにて解析を行うことを検討している。細胞遊走能評価においては、細胞を播種した数日後にトルイジンブルー染色を行い、細胞の集積面積を算出し、遊走面積の比較解析を検討している。 以上のことから、ヒト抜去歯幹細胞の組織形成能および増殖能を解析することで各種幹細胞の有する特性が解明されると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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