昨年度、寸法の比較的大きな供試材(Ti-6Al-4V合金)への水素処理(水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト化-熱間圧延-脱水素)の適用及びその処理によって得られた微細粒チタン合金の超塑性特性の把握は完了した。また、超塑性加工の予備試験において、メタルフレームの試作を行った結果、メタルフレームの頭頂部を含めた大まかな輪郭を形成させることができた。よって本年度は超塑性加工によるメタルフレームのさらなる精度向上を目指し、板厚、加工温度、加工圧力、保持時間を変化させて最適超塑性加工条件を探索した。その結果、板厚を0.70mmと若干薄くし、かつ最適加工温度及び圧力、保持時間にて超塑性加工を行うことで、外見上、優れたメタルフレームを作製することができた。また、鋳造法で作製したメタルフレームとは異なり、表側の表面酸化は見受けられなかった。試作したメタルフレームの断面板厚を測定したところ、板厚は辺縁部と頭頂部で0.2~0.6mmとやや不均一であった。以上のことより、板厚の均一性については若干の課題を残したが、水素処理による微細粒チタン合金を用いた超塑性加工法による歯科補綴物(メタルフレーム)の作製可能性を示すことができた。また、鋳造法によるメタルフレームは板厚が2~3mmと厚いが、超塑性加工による製作であれば、その板厚は0.5mm程度で済み、このことは健康な歯をできるだけ残した状態で疾患を治癒させることが可能になるものと考えられる。
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