研究課題/領域番号 |
24792164
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
村上 真史 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 口腔疾患研究部, 流動研究員 (30614531)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / リンパ球混合培養反応 / 免疫制御 / 歯髄再生 / 同種移植 |
研究概要 |
本研究は、同種移植による歯髄再生を目指して、歯髄幹細胞の免疫制御因子を明らかにし、その因子を利用した同種移植の可能性を探ることを目的とする。本年度は、歯髄幹細胞を分取し、その免疫制御能の解析と歯髄幹細胞培養上清中の免疫制御因子の同定に向けた予備的検討、技術習得を行った。 まず、イヌ歯髄組織から酵素消化により歯髄細胞を分離し、さらにフローサイトメトリーにてCD31- SP細胞を分取し、形質を維持したまま培養、増幅した。コントロールとしてCD31+ SP細胞を分取した。CD31- SP細胞は、CD40、CD80、CD86、MHC class II陽性率が低く、免疫原性が低いことが示唆された。 次に、リンパ球混合培養反応 (Mixed Lymphocyte reaction: MLR)を行うため、歯髄幹細胞を分取した個体と同一のイヌ2個体から採取した血液から比重遠心にて末梢血単核球 (PBMC)を分離した。一方のPBMCをMitomycin Cで2時間、前処理し、細胞増殖を停止させた。自己PBMCとMitomycin Cにて前処理した同種PBMCを混和し、あらかじめ回収しておいたCD31- SP細胞、CD31+ SP細胞の培養上清を濃縮し、添加した。その結果、CD31- SP細胞の濃縮培養上清を添加することで、自己PBMCの増殖が抑制されることがわかり、歯髄幹細胞の培養上清中に免疫制御因子を含むことがわかった。 歯髄幹細胞培養上清中の免疫制御因子の候補の同定に向けて、二次元電気泳動とin-gel digestionの技術を習得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、歯髄幹細胞の免疫制御能の解析と免疫制御因子の候補の同定に向けた予備的検討、技術習得を行った。歯髄幹細胞の免疫制御能については、イヌ歯髄組織から歯髄幹細胞を分取し、リンパ球混合培養反応 (MLR) によって、歯髄幹細胞の分泌タンパク中に免疫制御因子が存在することが示唆された。また、歯髄幹細胞は、CD40、CD80、CD86、MHC class II発現が低く、免疫原性が低いことが示唆された。 歯髄幹細胞の分泌タンパク中に存在する免疫制御因子の同定に向けて、二次元電気泳動とin-gel digestionの技術を習得した。現在、CD31-SP細胞に特異的なスポットを得るための二次元電気泳動の最適な条件を検討中である。さらに、Cytometric Bead Array Systemを用いて歯髄幹細胞の分泌タンパク中に存在する免疫制御性サイトカインの定量を行い、炎症性サイトカインが歯髄幹細胞の分泌タンパク中に少ないことが示唆された。 また、歯髄幹細胞へのsiRNA遺伝子導入に向けて、エレクトロポレーションの技術を習得し、さらに、歯根内にScaffoldと共にCD31-SP細胞を充填してマウスの皮下に移植することで、炎症反応を起こすことなく歯根内に歯髄組織が再生することを明らかにした。 免疫制御因子の候補を同定することで、その後の実験はほぼ滞りなく進めることができると考え、上記の自己点検による評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、まず歯髄幹細胞培養上清中の免疫制御因子の候補を二次元電気泳動、質量分析によって決定する。免疫制御因子タンパク質候補遺伝子に対するsiRNAを遺伝子導入し、免疫制御因子候補の発現を抑制したCD31-SP細胞を用い、MLRによりPBMCの増殖への影響を検証し、候補を確定する。同定した免疫制御因子遺伝子のPCRクローニング用プライマーを設計し、CD31-SP細胞から抽出したRNAサンプルを逆転写して得られたcDNAを鋳型として免疫制御因子遺伝子をPCRクローニングし、発現ベクターに組み込み、その発現ベクターを細胞に遺伝子導入し、細胞が放出する目的タンパク質を精製する。上記のリコンビナントの免疫制御因子を用いてMLRを行い、PBMCの増殖抑制から、in vitroにおいて免疫制御能を検討し、免疫制御因子を同定する。 平成26年度は、CD31-SP細胞、CD31+SP細胞あるいは歯髄細胞と同定したリコンビナント免疫制御因子をscaffoldと共にイヌの歯のslice (径1 mm) 内に充填し、マウスの皮下に移植する。経時的に組織切片を作製し、slice内部組織への好中球の遊走および炎症性マーカーの発現を各サンプルで形態学的・免疫組織学的に検討し、この免疫制御因子添加による免疫制御効果を検討する。以上のことから、同定した免疫制御因子がin vivoにおいて幹細胞移植における免疫制御を担うことを証明し、拒絶反応とそれに伴う炎症反応のない同種幹細胞移植の可能性を示す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
適正に使用した結果、端数が残った。 平成25年度に使用する資材、消耗品の購入に使用する。
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