本研究は、同種移植による歯髄再生を目指して、歯髄幹細胞の免疫制御因子を明らかにし、その因子を利用した同種移植の可能性を探ることを目的とする。本年度は、ブタ歯髄、骨髄、脂肪CD31- SP細胞培養上清の濃縮液を用いた混合リンパ球培養反応 (Mixed Lymphocyte reaction:MLR)にて、歯髄CD31- SP細胞培養上清が最も末梢血リンパ球の増殖を抑制した、という結果から、マイクロアレイや、Millipore社のMILLIPLEX MAG KITを使用し、免疫制御因子の絞り込みと、その効果の検討を行った。 ブタ歯髄、骨髄、脂肪CD31- SP細胞のマイクロアレイの結果を解析し、歯髄CD31- SP細胞で骨髄、脂肪CD31- SP細胞と比較して発現量が高く、免疫制御に関する報告がある因子を探索した。次に、探索した因子のタンパク発現について、ブタ歯髄、骨髄、脂肪CD31- SP細胞の細胞溶解液を用いて、Western Blottingにて解析した。その結果、MCP-1 (Monocyte Chemotactic Protein-1)が歯髄CD31- SP細胞において、骨髄、脂肪CD31- SP細胞と比較して高発現であることがわかった。また、Millipore社のMILLIPLEX MAG KITを用いて、歯髄幹細胞培養上清濃縮液中のMCP-1を定量し、他の因子と比較して多く含まれていることがわかった。 そこで、MCP-1リコンビナントタンパクを購入し、in vitroにおける免疫抑制効果を検討した。マクロファージのモデルとして、ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1細胞をPMAにてマクロファージ様細胞に分化誘導した上で、IFN-γ並びにLPSにて刺激し、そこへ歯髄幹細胞培養上清濃縮液、あるいはMCP-1タンパクを添加することによる、炎症反応抑制因子、IL-10、IDO mRNA発現の変化を測定した。その結果、歯髄幹細胞培養上清濃縮液、MCP-1タンパク添加時に、それらの発現が増加することがわかった。従って、歯髄幹細胞培養上清濃縮液、MCP-1タンパクによって、炎症反応が抑制される可能性が示唆された。
|