研究課題
癌細胞は非常に高い増殖活性を示し、その必要エネルギーは高度に亢進した代謝活性により維持されている。この機構には腫瘍特異的な低酸素環境下における転写因子HIF1活性化による糖代謝亢進が深く関与していると理解され、増殖活性が高い腫瘍ほど中心部に低酸素領域を生じるとされてきた。しかし、臨床において非常に高い代謝活性を示す腫瘍組織において糖質の取り込み活性を利用したFDG-PETでは高率に陽性所見が得られるのに対し低酸素領域を反映するFMISO-PETにおいては、陽性所見の検出率は低くとどまっている。この乖離から高度の代謝活性を低酸素状態単独では説明しえない症例が存在することになり、治療応用を念頭に本研究を開始した。研究期間中、研究代表者の国内移籍、帰任があり当初研究計画より研究着手に時間を要したが、計画した動物実験の予備データ蓄積とともに、研究全体を支える根本的な現象論を確立するため臨床研究を進めた。蓄積されていたFDG-PET、FMISO-PET撮影症例につき、保存されていた病理標本の再評価として2000個を超えるリンパ節標本を検証。75個の転移陽性リンパ節を網羅的に組織染色し転移病巣におけるHIF1発現、増殖活性を示すKi67発現を評価、糖質取り込み活性を推測する目的でGLUT1発現も検討した。結果、全検証項目で転移巣に特異的な高発現が高頻度に確認され、相互の相関が示唆された。GLUT1に関しては発現パターンからHIF1の関与は部分的であると結論したが、HIF1発現パターンは腫瘍組織中に想定される酸素濃度勾配と関連性は低く、逆に増殖活性との非常に強い関連が考えられた。本検討結果はこれまで報告例の無い現象であり、その新規性から現在、公表にむけての準備中である。
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