研究課題/領域番号 |
24792176
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 雅修 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師(病院) (10392333)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エピジェネティクス |
研究概要 |
非癌部食道粘膜における喫煙関連メチル化遺伝子について、口腔扁平上皮癌組織(喫煙歴のある患者由来)における異常の有無の検討を行っている。口腔と食道は近接した臓器であり、化学物質等に対する暴露量も同等レベルと考えられる。そのため、それらの物質に起因して生じる遺伝子変異や癌の発生機序も類似している可能性が高いと予測される。よって食道癌において喫煙歴と相関するDNAメチル化異常を認める遺伝子は、喫煙歴のある患者由来の口腔扁平上皮癌においても同様の異常を認める可能性が十分にあると思われる。Okaらは非癌部食道粘膜における喫煙歴と相関するDNAメチル化の異常を認める遺伝子5つ(HOXA9, MT1M, NEFH, RSPO4, UCHL1)を同定し、報告している(Oka D et al, Cancer, 2009)。そこで口腔扁平上皮癌組織における上記の5つの遺伝子のメチル化異常の有無と喫煙歴の有無について相関があるか否かについて検討を行っている。サンプルは口腔癌26検体および口腔白板症26検体を用いた。組織からDNAを抽出し、制限酵素で断片化、Bisulfite(重亜硫酸ナトリウム)処理による塩基置換を行った後、精製を行い、TEに溶解させてDNAメチル化解析に用いた。1回のBisulfite処理には、500 ngのDNAを使用した。 DNAメチル化解析法としてはMethylation-Specific PCR(MSP)法を用いた。プライマーはOkaらが用いたメチル化DNA特異的プライマーおよび非メチル化DNA特異的プライマーをそれぞれ使用した。完全メチル化DNAおよび完全非メチル化DNAを作成し、プライマーの条件検討に用いた。またPCR産物を組み込んだプラスミドDNAを、スタンダードDNAとして分子数の指標とした。現在、臨床検体に関して定量的MSP法にて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Okaらが報告した非癌部食道粘膜における喫煙歴と相関するDNAメチル化の異常を認める遺伝子5つ(HOXA9, MT1M, NEFH, RSPO4, UCHL1)について(Oka D et al, Cancer, 2009)、口腔扁平上皮癌組織におけるメチル化異常の有無と喫煙歴の有無について相関があるか否かについて順調に解析を進めている。DNAメチル化解析法としてはMethylation-Specific PCR(MSP)法を用いたが、メチル化DNA特異的プライマーおよび非メチル化DNA特異的プライマーをそれぞれ条件検討を重ね適切な条件を決定した。DNAメチル化の定量化を行うため スタンダードDNA(PCR産物を組み込んだプラスミドDNA)を用意し、口腔扁平上皮癌組織に関して定量的MSP法にて順調に解析を行いデータを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
口腔扁平上皮癌における喫煙関連遺伝子の新規スクリーニングを行う。複数の症例に関連したDNAメチル化の違いを同定するために喫煙歴のある患者由来の口腔扁平上皮癌組織から抽出したDNA 2サンプルについて、最新のゲノム網羅的なDNAメチル化検索法であるMethylated DNA immunoprecipitation-microarray analysis (MeDIP-マイクロアレイ法)を試みる。MeDIP-マイクロアレイ法により得られた遺伝子のDNAメチル化状態の確認を行う。 喫煙歴を有する患者の口腔扁平上皮癌のDNAサンプルで実際にメチル化の違いが存在するか否かを確認するためにMethylation-Specific PCR(MSP)法を行う。MSP法ではメチル化DNA特異的プライマーおよび非メチル化DNA特異的プライマーを各々デザインする。DNAメチル化の違いが観察されたフラグメントに関してBisulfite-sequencing法を用いて各々のCpGサイトがどの程度メチル化されているかについて検討する。喫煙歴を有する癌患者由来の口腔扁平上皮癌組織においてDNAメチル化異常を認めた遺伝子の非癌部正常口腔粘膜組織における異常の有無の検討を行う。DNAメチル化の異常が、喫煙歴を有する患者の口腔扁平上皮癌組織において認められた場合、非癌部正常口腔粘膜においてもその異常が認められるか否かを検討する。また、リスクの指標となり得る候補遺伝子の異常DNAメチル化レベルの定量的解析法を確立する。非癌部正常口腔粘膜におけるDNAメチル化蓄積レベルの差の定量的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内研究成果発表に10万円程度、国外研究成果発表20万円程度を予定している。論文投稿料として10万円程度、複写費として5万円程度、人件費、謝金等は予定していない。MSP法や Real time RT-PCR 法やシークエンシングなどの分子生物学的解析機器はすでに申請者の研究室で現有しているため設備備品費は予定していない。そのため研究費は主に試薬などの消耗品に充足する予定である。遺伝子ごとにプライマーをオーダーする必要であり、少なくとも20万円程度を要する。また試薬の単価は約1万~10万円程度である。細胞培養に使う培養皿、試験管などで30万円以上を予定している。
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