研究課題/領域番号 |
24792181
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
道川 千絵子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (00622648)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 被膜外浸潤 / 口腔 / リンパ節 / 転移 / 扁平上皮癌 / リンパ管侵襲 / 静脈侵襲 |
研究概要 |
申請者は、現在までに、術前治療を行っていない口腔扁平上皮癌127症例に対し、頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤(ECS)の存在が最も重要な予後因子の1つであることを示してきた(Br J Cancer. 2011 Mar 1;104(5):850-5)。しかし、ECSがどのように生じるのかそのメカニズムはいまだ推測の域を出ない。 そこで、次のステップとして、転移リンパ節のいずれか1つにECSを認めた症例19例を対象とし、同症例の転移リンパ節を病理組織学的に詳細に解析し、予後との関連性について検討した。同19症例の転移リンパ節74個に対し、転移リンパ節の面積(A)、転移リンパ節内の腫瘍占有面積(B)および被膜外浸潤部の面積(C)、転移リンパ節の長径、短径を測定した。(A)に対する(B)の百分率を腫瘍占有率 (%)、(B)に対する(C)の百分率を腫瘍内外比(%)と定義した。得られた値を用いて、ECSを生じたECS+リンパ節群と生じなかったECS-群との違いを統計学的に解析し、第31回 口腔腫瘍学会にて報告した。さらに、腫瘍内外比、短径を用いて、ECS+リンパ節を4つのタイプに分類し、予後不良になりやすい症例を選択できる可能性を見出した(第37回 頭頚部癌学会、第21回 ICOMSにて発表予定)。 また、他臓器の癌においては、臨床的意義が多くの報告で明らかにされている脈管侵襲(リンパ管侵襲/静脈侵襲)に注目し、D2-40免疫染色とエラスチカ・ワンギーソン染色を用いて、まず、舌癌63例の原発巣において脈管侵襲の有無を詳細に解析した。被膜外浸潤との関連性は抽出できなかったものの、リンパ管侵襲と頸部リンパ節転移、静脈侵襲と不良な予後との強い関連性を報告した(Oral Oncol. 2012 Apr;48(4):320-4.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2012年度1年間に、被膜外浸潤(ECS)と関連する遺伝子を同定するための検体採取を行い、術前治療をしていない口腔扁平上皮癌3㎜格の検体を15例収集できたが、他の研究者が別の目的にて使用することとなった。 また、被膜外浸潤を生じているリンパ節の病理組織学的、形態学的な解析は進められたものの、得られた解析データをどのように使用すべきかの検討に時間がかかり、対象症例数が少なくなってしまった。 被膜外浸潤と関連する臨床病理学的情報を増やすため、癌の持つ遺伝的多様性の原発巣における表現型に関して探索した結果はまとめ、第35回頭頚部癌学会、および、第57回口腔外科学会にて報告を行った。現在論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
①被膜外浸潤のメカニズム解明に向けて、ターゲット遺伝子を抽出するためには、臨床検体の使用が不可欠であるため、検体採取を引き続き行う。 ②被膜外浸潤がどのようなリンパ節にどのように生じるのか、病理組織学的、形態学的に詳しく検索する作業は、症例数を増やして続けていく。最終的には、マクロのレベルで被膜外浸潤を分類できる可能性をさらに煮詰め、同定を目指すターゲット遺伝子の機能との関連性をみていく準備をする。 ③癌の持つ遺伝的多様性の原発巣における表現型に関して探索した結果を論文にまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
①マイクロアレイ解析 2012年度の検体は使用したものの、2007年7月以降から、採取している臨床検体のデータを整理し、解析にかける。 ②ターゲット遺伝子の同定 解析結果から抽出された遺伝子群について、まず、文献からその機能を検索し、頸部リンパ節転移と被膜外浸潤とに関連しそうな遺伝子を候補として選択する。この候補遺伝子群に対し、プライマーを設計し(あるいは既成プライマー)real-time PCRを行い、マイクロアレイ解析との相同性が得られた遺伝子を絞り込む。この遺伝子の機能と被膜外浸潤陽性リンパ節のマクロによる分類とを照らし合わせる。
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