研究課題/領域番号 |
24792186
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 孝憲 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00464016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 上皮内癌 / 初期浸潤癌 / 細胞外基質 / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / ラミニン / IV型コラゲン / テネイシン |
研究概要 |
口腔粘膜扁平上皮癌・上皮内癌のヒト外科材料のHE染色切片にて病理組織学的に検討し、正常上皮・異型上皮・上皮内癌・浸潤癌を区別し、さらに異型上皮を二層性異型上皮・過正角化型異型上皮・その他の異型上皮に、上皮内癌を基底細胞型・疣贅型・棘細胞型に分類した。正常口腔粘膜上皮組織における細胞外基質分子の発現状況を確定するために、基底膜構成分子であるヘパラン硫酸プロテオグリカン(パールカン)・IV型コラゲン・ラミニン・テネイシン分子について免疫組織学的に検討した。その結果、正常上皮においては基底膜に一致して上記分子の発現が確認され、上皮層内および粘膜固有層に過剰沈着はなかった。正常上皮での発現様式をもとに境界病変を客観的に判定すると、異型上皮では増殖帯相当部においてパールカンが上皮細胞間に過剰に発現していた。また上皮内癌では、パールカンが上皮層内に過剰沈着するとともに、HE染色切片で確認された<基底膜領域の肥厚>領域に一致して上記基底膜分子の沈着が確認され、同現象が浸潤準備段階の分子生物学的変化と解釈された。いっぽう浸潤癌では、細胞外基質、とくにパールカン沈着が上皮内から周囲の癌間質細胞中に切り替わる<細胞外基質沈着領域のスイッチング現象>が免永輝組織化学的に確認された。 ついで、1995年-2007年の口腔癌483症例について術後の再発の有無や経緯を検索し、再発と切除断端の露出病変との関連を調査した。これまでのところ再発例や多発例、難治例が全体の約1/4程度を占めること、再発例では切除断端に上皮内癌が残存している症例が7割にのぼること、上皮内癌が露出している場合の再発までの期間が平均30か月程度であることを確認した。また多発例では、病理組織学的に主病変周囲に過正角化型異型上皮をともなっていることがすでに判明したので、同異型上皮の細胞外基質分子の動向についても十分検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階では、病変の抽出および手術後の予後を含めた臨床情報収集はおおむね終了している。さらに病理組織学的に病変を分類し、それらの代表病変における免疫組織学的解析を進行中である。 24年度中にin situハイブリダーゼーションを予定していたが、免疫組織化学に時間を要しており、施行するに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
まずは細胞外基質分子の免疫組織化学的検索を中心におこない、各病変におけるin vivoでの細胞外基質分子の沈着状況を確定する。ついで、in situハイブリダーゼーションにて細胞外基質mRNA発現を検討し、細胞外基質分子の産生責任細胞の特定を目指す。また口腔癌由来の癌細胞株と同線維芽細胞株の共培養にてin vitroにおける細胞外基質分子の発現と遺伝子発現状況を検索する。 以上の結果から口腔癌および境界病変における細胞外基質の産生沈着パタンが集約できるので、最終的には臨床データと実験データを合わせて解析し、本研究で注目している<上皮内癌における基底膜領域の肥厚現象>と<浸潤癌における細胞外基質沈着領域のスイッチング現象>の臨床的意義を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な器材などハード面の準備は整っているので、基本的には抗体などの免疫染色関連試薬、遺伝子実験関連試薬、細胞培養関連試薬などの消耗品が主たる用途となる。 実験遂行による成果発表ならびに資料収集にかかわる学会参加も予定している。
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