研究課題
【研究の目的】再生医療において、間葉系幹細胞を生体親和性に優れたバイオマテリアルに組み込むことで高次的な組織構築を可能とするティッシュエンジニアリングが注目されている。しかし、これらの培養技術を応用した骨再生の有用性について、組織学的に詳細に報告したものは非常に少ない。本研究では、申請者が確立したラット頭蓋骨実験モデルに、間葉系幹細胞・多孔性β-TCPブロック複合体を用いて、骨再生における細胞動態(骨芽細胞への分化誘導、破骨細胞と骨芽細胞のカップリング、骨細胞・骨細管系ネットワーク)および再生骨の骨質を微細構造学的・細胞生物学的に解析することで、より良い骨再生に向けたトランスレーショナルリサーチの学術基盤とする。【研究成果】平成24年度はβ-TCPブロックに骨髄由来間葉系幹細胞を播種した場合の骨再生法について、β-TCPブロック単独の場合と比較して形態学的に評価を行った。また、骨再生における破骨細胞と骨芽細胞のカップリング動態、骨細胞・骨細管系ネットワークを細胞学的に解析した。その結果、骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞様細胞に分化させ多孔性β-TCPブロックに播種することで、β-TCPブロック単体よりも広範囲に骨が新生されること、また骨芽細胞と破骨細胞のカップリングのプロセスを経て良好な骨質を有する骨再生が可能であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
骨再生バイオマテリアルと間葉系幹細胞併用による骨再生について、量的評価(形態学的評価)を行うことができたため。したがって次年度は、質的評価(骨質評価)を行う予定である。
平成24年度で確立した骨再生法によって得られる再生骨の「骨質(bone quality)」について、組織化学的解析、微細構造学的観察ならびに元素分析など様々な手法を用いて評価を行い、臨床応用に向けた有用性についても検討する。(1)組織化学的解析:再生骨の骨質について、「骨細胞・骨細管系」から評価する。具体的には、骨細胞のマーカーであるDMP-1、FGF23、ならびにsclerostinの免疫局在を観察する。特に、骨細胞から産生されるsclerostin (SOST gene由来)については、骨芽細胞のWnt signalを抑制する報告が出ている。骨リモデリングで機能的な骨細管系(osteocyte lacunar canalicular system)が形成されると、骨細胞からsclerostinが誘導されWnt signalを抑制して骨芽細胞が非活性状態になるということが知られているため、蛋白局在レベルにてsclerosin局在と再生骨の状態とを解析する。(2)微細構造学的観察:再生骨を透過型電子顕微鏡で観察し、コラーゲン線維の走行(密度、方向性)、骨細胞の形態、配列をみることで骨質の評価を行う。(3)電子線マイクロアナライザ(EPMA)元素分析:既存骨と再生骨のCa,P,Mg元素の分布状態を解析することで、再生骨の骨質を評価する。
平成24年度は順調に研究を行うことができたため、当初の予定よりも研究費がかからなかったが、平成25年度には組織化学的観察だけでなく、微細構造学的観察、元素分析学的観察を行う予定であり、そのためにも下記の試薬等が必要になる。組織化学試薬(各種抗体等・酵素組織化学試薬など)、細胞培養試薬(細胞培養液、ウシ胎仔血清、培養器具など)、電子顕微鏡試薬(エポン樹脂、電顕フィルム、印画紙など)、実験動物(ラット40匹)、研究成果発表など
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