研究課題
若手研究(B)
ゼラチンハイドロゲルを用いたFGF-2徐放システムによるマウス歯槽骨再生の実証および試適条件の検索を行った。これまでの研究結果(Bone. 2009 Apr;44(4):699-707および第9回日本組織工学会,京都,2006年9月)を踏まえて、上顎歯槽骨へ1.0~50.0μgのFGF-2を含浸させたゼラチンハイドロゲルを投与し、歯槽骨再生量を評価した。ゼラチンハイドロゲルおよび徐放条件は含水率98%(徐放期間約7日)、実験期間28日とし、各群25匹(n=5)のDDYマウスを用いた。対照としてFGF-2水溶液投与群を用いた。歯槽骨再生量の評価はsoft X-rayを用いた計測により行った。FGF-2徐放システムを用いた群の歯槽骨再生量はFGF-2なし:0.1±0.7mm、1.0μgFGF-2:1.4±1.0mm、10.0μgFGF-2:1.9±0.6mm、20.0μgFGF-2:2.1±0.3mm、50.0μgFGF-2:2.5±0.4mmとなり、一方で水溶液で投与した群の歯槽骨再生量はFGF-2なし:-0.1±0.2mm、1.0μgFGF-2:0.4±0.5mm、10.0μgFGF-2:1.4±0.4mm、20.0μgFGF-2:1.2±0.5mm、50.0μgFGF-2:0.9±0.7mmであった。以上よりFGF-2徐放システムを用いることでより効果的な安定した歯槽骨再生が得られること、再生に必要なFGF-2が10μgであることが推察された。10μgのFGF-2徐放群の平均歯槽骨再生量は厚みで1.9±0.6mmに達し、反復投与を行うことで実用に耐えうる再生量を得る可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
FGF-2単回投与での歯槽骨再生の試適条件検索が順調に終了した。今後はこれまでの結果に基づいた反復投与実験へ移行し、実用に耐えうる歯槽骨再生量が得られることを確認する。
これまでの結果に基づき、至適歯槽骨再生条件でFGF-2徐放システムを反復使用し、これまで以上の歯槽骨再生が得られることを実証するとともに、歯槽骨再生過程の組織像、間葉系幹細胞や骨芽細胞系細胞についてその増殖や分化、血管新生、骨組織形成課程を評価する。加えて、FGF-2反復投与による骨形成課程の分子生物学的機序の解明を目的として、組織特異的な組織片採取を行い、FGF受容体群、未分化間葉細胞の骨芽細胞への分化決定に関わる転写因子、骨芽細胞系マーカーの発現を解析する。
動物実験に関わる費用として実験動物(ddYマウス)の購入・管理、FGF-2蛋白を、組織学的解析に関わる費用として免疫染色用抗体および関連試薬を、分子生物学的機序の解明に関わる費用としてRNA抽出・精製およびPCRに関連するプローブや試薬群の購入を予定している。また、関連学会での情報収集を適宜行う。
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新潟歯学会誌
巻: 42巻 ページ: 27~36