研究課題
①RT-PCRによるmRNA発現の検討の結果、Akt/mTOR経路においては、Akt1、Akt3ならびにmTORのmRNAの発現が減弱していた。また、アポトーシスに関連しているp53/p21経路においては、p53ならびにp21のmRNAの発現が増強していた。さらにAMPK関連因子であり浸潤に関与しているARK5の経時的発現減弱を認めた。②Western blottingによるAMPKαのリン酸化に伴い、mTORの発現に変化はないものの、mTORのリン酸化タンパク(phospho-mTOR)の発現減弱を認め、さらにp53タンパクの発現増加を認めた。また、アポトーシス抑制因子であるbcl-2の発現減弱、アポトーシス促進因子であるbaxの発現増加を認めた。③Invasion assyによるAICARの癌細胞浸潤に対する効果を検討した結果、AICAR非投与群の浸潤率が24.73%であったのに対し、AICAR混濁培養液群では5.91%となり、顕著な細胞浸潤抑制効果が認められた。④ゼラチンザイモグラフィーを用いたMMPsの発現を検討した結果、pro-MMP-2の発現減弱を認めた。以上の結果より、AMPK活性化薬剤であるAICARの細胞増殖抑制効果ならびに浸潤抑制効果が確認されたが、細胞増殖抑制効果は、細胞増殖に深く関わっているとされるAkt/mTOR経路の抑制だけではなく、アポトーシスに関連しているp53/p21経路の活性化も関わっていることが示唆された。また、浸潤抑制効果はMMP2の活性型であるpro-MMP2の発現変動に寄るものであることが示唆された。しかし、ゼラチンザイモグラフィーの結果に有意な差が認められなかったことから、さらなる浸潤関連因子の検索が必要と考える。
3: やや遅れている
正所性移植モデルの研究に関して遅れている。これは移植細胞の増殖能が悪く、移植実験に用いれなかったためである。原因としては、継代培養に伴いその増殖能が変化したと考えられる。そこで初代培養細胞を培養するところから始めたため、当該年度中にはマウスの購入やマウスへの移植ができない状況にあった。
組織生着率が高く、高転移性である、口腔扁平上皮癌における4C型の浸潤様式を表す細胞株OSC-19細胞を用い、正所性(舌)に移植したヌードマウスを実験に供する。OSC-19細胞を6週齢のヌードマウスの舌に移植し、移植1週間後より腹腔内にAMPK活性化薬剤を定期的に投与する。経時的な腫瘍の増大ならびに組織学的変化を検索し、AMPK活性化薬剤の腫瘍の増殖・浸潤・転移抑制能を比較検討する。さらに、口腔扁平上皮癌罹患患者の転移リンパ節より樹立した前述の細胞株に対し、低濃度から高濃度へと濃度勾配をつけながら抗癌剤に接触させ、生存した細胞を抗癌剤耐性細胞株(rHOC-313、rOSC-19、rOSC-20)として使用する。抗癌剤は口腔扁平上皮癌の抗癌剤治療における主要薬物であるシスプラチン(白金製剤)を使用することとする。抗癌剤耐性細胞株に対するAICARの細胞増殖抑制効果についてMTT assay法を用い検討する。また、抗癌剤耐性細胞株に対するAICARの浸潤抑制効果に関してはInvasion assay法にて浸潤率を計測し、検討することとする。また、正所性移植モデルにて抗癌剤耐性細胞株に対するAICARのin vivoでの抗腫瘍効果を検討する。今後の臨床における癌治療に対して期待できる薬剤であることが示唆され、さらには癌細胞の転移に対する効果ならびに抗癌剤耐性癌細胞に対する効果を明らかにしていきたい。
平成24年度に予定していた移植モデルの実験が、培養細胞の増殖能の問題のため次年度に行うこととしたため、それに伴う費用は繰り越すことにした。今年度の実験には口腔扁平上皮癌細胞株を使用するため大量に培養し、研究にAMPK活性化薬物を使用するため、培養容器ならびに試薬に研究費が必要である。また、正所性移植モデルに使用するヌードマウスの購入費や餌などの飼育費が必要である。さらに研究成果発表ならびに本領域における最先端の情報を収集するため、年数回の学会発表ならびに学会参加を要し、それにかかる旅費が必要である。その研究成果を論文とするための論文校閲費とや論文投稿料、別刷り費用が必要となる。
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Oncology Report
巻: 29(2) ページ: 445-450
10.3892/or.2012.2161.