まずは実際にアポトーシスが誘導されているかをApoptosis Detection Kitを用いて検討した。その結果、投与24時間後には顕著にアポトーシスが起こり、48時間後には多くの癌細胞がアポトーシスを起こしていることが確認できた。 そこでAICAR投与によるアポトーシスや増殖に関連する遺伝子の発現を検討した結果、細胞増殖に大きく関わっているとされているAkt/mTOR経路においては、Akt1、Akt3ならびにmTORのmRNAの発現が減弱していた。また、アポトーシスに関連しているp53/p21経路においては、p53ならびにp21のmRNAの発現が増強していた。 タンパク質発現の変動をWestern Blot法を用いて検討した結果、AMPKα、Phospho-AMPKαともに経時的に発現量の増加を認め、AMPKαのリン酸化に伴い、mTORのリン酸化タンパクの発現減弱を認め、p53ならびにp21タンパクの発現増加を認めた。さらに、経時的なp53の増加ならびにPCNAの減弱を認めた。このことより、AICARが口腔扁平上皮癌細胞株のアポトーシスを誘導するように働き、細胞増殖活性を抑制するように働いていることが示唆された。 浸潤に対する効果を検討するためInvasion assay法にて癌浸潤に対する効果を検討した。その結果、AICAR投与群では有意に癌浸潤抑制効果が確認できた。ゼラチンザイモグラフィーによるMMPsの発現を検討した結果、pro-MMP-2の発現減弱を認めた。さらにAMPK familiyの一つでありMMPの産生亢進を誘導しているとされているARK5の経時的mRNA発現減弱を認めた。 以上の結果より、AMPK活性化薬剤であるAICARの投与により癌細胞はアポトーシスを起こし、癌細胞増殖抑制効果ならびに浸潤抑制効果においても確認できた。これはAkt/mTOR経路の抑制だけでなく、アポトーシスに関わっているp53/p21経路の活性化により増殖抑制を抑制していると考えられた。
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