研究課題/領域番号 |
24792194
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉澤 邦夫 金沢大学, 大学病院, 助教 (60452108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Claudin-7 / 口腔扁平上皮がん / 浸潤 / 転移 / 細胞接着 |
研究概要 |
細胞間接着因子Claudinは、24種類のサブタイプからなるファミリーを形成し、正常細胞では細胞膜の極性を保ち、物質透過性を調節する作用を持つ。各種臓器のがん化においてClaudinのさまざまな発現変化が認められるが、口腔扁平上皮癌ではその関連性がよく分かっていない。そこで今回は、口腔扁平上皮癌においてがん化の様態をよく示すがん浸潤様式山本・小浜分類を用いて、Claudin機能発現がどのようにがん細胞浸潤に関わるかを調べ、そのメカニズムを解明することでがん浸潤・転移の抑制化を検討した。 浸潤様式由来が明確な病理組織切片および細胞株を用い、細胞株におけるClaudin-7の発現をRT-PCR法およびWestern blotting法にて調べ、in vivoの実験では、病理組織学的因子と比較検討し、Claudin-7が予後予測因子あるいは腫瘍マーカーとして活用できうるかどうかを検討した。 各細胞株は10%ウシ胎児血清と1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加した最小必要培地MEM®(Sigma-Aldrich)にて5%,CO2, 37℃の条件下で培養した。RT-PCR法およびWestern blotting法において浸潤様式が高くなるほど、Claudin-7の発現は減弱していることが判明し、同様に免疫組織化学染色法においても浸潤様式が高くになるつれて、免疫染色陽性率が下がる傾向が見られ、生存率のおいても予後不良であった。 これらのことから、Claudin-7は口腔扁平上皮がん浸潤様式に関連し、予後因子として利用できる可能性があると考えられる。また、この研究の意義としては、口腔扁平上皮がんの予後因子として利用するだけではなく、Claudin-7の発現機能を解明し、応用することで、浸潤・転移能を抑制化を図ることにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間の研究期間で、今研究の予定を立てているが、初年度の研究課題としては、細胞株と病理組織切片におけるClaudin-7の発現とその病理学的因子との関連を調べることとした。初年度の達成度としては、上述の関連性を調べることができ、その内容を査読付きの英語原著論文としても受理もされており、おおむね順調に進展していると自己評価した。今後の研究内容は、今後応用分野に入り、浸潤能をinvasion assayにて計測し、増殖能をwound healing assayで検討した後に、シスプラチン感受性試験、siRNAによる抑制実験をin vitroで行う予定であり、さらに、in vivoではマウスを使用した正所性移植実験も含まれている。今後の研究内容に進むにあたり、今年度H24年度の成果を元に進めることができる。 現在までに終えた研究内容を下記する。 RT-PCR法:Claudin-7 発現はRT-PCR法にて検討した。Western blotting法:Claudin-7タンパク質発現はWestern blotting法にて検討した。免疫組織学的染色:in vivoにおけるClaudin発現の局在性を検討した。検出に使用した抗体はWestern blotting法にて使用した抗体と同一にした。材料としては金沢大学附属病院歯科口腔外科を受診した口腔扁平上皮癌一次症例患者より得られた病理組織切片を対象とした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のH24年度の研究成果を踏まえて、H25年度の研究を推進する。研究方法に関しては、下記の通りである。 3D浸潤モデル作成:BDバイオコートマトリゲルインベージョンチャンバー®(BD Bioscienes)を用いて各がん細胞の浸潤能を検討する。Wound healing aasay:培養条件がコンフルエントになった時点で、1000uLのピペットの先にて直線上に細胞を機械的にはがす。3回PBSで洗浄し、インキュベートし、0, 5, 10 時間後に細胞剥離層の幅を計測する。抗がん剤(シスプラチン)感受性試験:in vitroにおける化学療法効果の判定はMTS assay®(Promega)にて行う。siRNA抑制実験:各ターゲットとしたmRNAを標的とした21塩基のsiRNAを合成、精製し実験に供する。導入にはHiperFect Transfection Reagent®(QIAGEN)を使用する。siRNA導入の至適条件を詳細に検討し、siRNA導入後に上記のごとくRT-PCR法、Western blotting法を行う。また、予備実験ではサブコンフルエント(70-80%)に培養した細胞株に対し、siRNA至適濃度として5nM, 導入時間は48時間が良好であった。また、抑制実験のコントロールとしてはnonsense siRNAを用いている。internal controlとしてはβ-actinを統一して用いる。そして、最終的にin vivoにおける浸潤・転移モデルをマウスを用いて作製し、Claudin-7の機能発現を調整した細胞株を正所性移植し、その意義や変化を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究方法には時間短縮や再現性を持たせるためにKitを購入し、研究を行う予定であるため、Kit購入やそれまでの細胞培養にかかる諸経費および最終的にはマウス購入費、維持費が必要となる。 3D浸潤モデル作成: BDバイオコートマトリゲルインベージョンチャンバー®(BD Bioscienes)を購入する。抗がん剤(シスプラチン)感受性試験:in vitroにおける化学療法効果の判定はMTS assay®(Promega)を用いるため、96穴マイクロプレートおよびMTS assay試薬を購入する。 siRNA抑制実験:各ターゲットとしたmRNAを標的とした21塩基のsiRNAを合成、精製し実験に供する。導入にはHiperFect Transfection Reagent®(QIAGEN)を使用する。これらよりHiperFect Transfection Reagent®(QIAGEN)などの購入を行う。 初年度のH24年度に294,425円の未使用額が発生しているが、その理由としては、細胞培養に伴う諸経費や各試薬の購入費が割引中で安価に購入できたためである。
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