研究課題
近年、分子標的治療薬が開発され、一部の悪性腫瘍に使用されるようになったきた。頭頸部癌においても単独もしくは抗癌剤と併用して分子標的治療薬が使用されるようになった。24年度は口腔扁平上皮癌の浸潤と転移を臨床に近い状態で再現できる正所性移植モデルを用いて、血管新生阻害薬の効果を検討した。使用した癌細胞は悪性度が高い浸潤様式4C型と診断された舌癌患者の頸部リンパ節転移巣から樹立した高浸潤高転移性のヒト口腔扁平上皮癌細胞株であるOSC-19細胞を使用し、ヌードマウスの舌に移植した。血管新生阻害薬はアバスチンを使用した。週2日、生理食塩水に溶解した血管新生阻害効果のあるアバスチンを腹腔内に投与し、腫瘍増殖に対する効果、浸潤に対する効果、転移に対する効果について検討した。実験を中途にしてアバスチン投与群、対象群(生理食塩水を腹腔内投与)ともに多数死亡した。実験は予定期間より早めに終了させ検討した。コントロール群とアバスチン投与群では腫瘍の大きさの平均に差異は認められなかった。リンパ節転移は両群とも1匹ずつリンパ節転移を認めた。血管内皮細胞増殖因子であるVEGF抗体で免疫染色を行ったところアバスチン投与群で血管新生が抑制されている傾向がみられた。しかしながら、実験期間中に多数死亡したため明確な結果を得るに足らなかった。死亡した原因を調べたところ、溶解液である生理食塩水である可能性が考えられた。25年度はこのことをふまえ、投与薬剤を調整し、再検討を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
24年度は移植モデルに血管新生阻害薬を投与し、抗腫瘍効果、リンパ節転移、血管新生阻害効果について検索した。その結果、血管新生阻害効果に関しては興味ある傾向が示されている。一方、血管新生阻害薬と抗癌剤の併用実験は20匹のヌードマウスを用いた予備実験で、実験期間中に17匹が死亡した。そこで、マウスの死亡の原因を調査してから後、25年度に抗癌剤の併用実験を改めて行うこととした。そのため、マウスモデルに使用する予定であった経費、68万円が25年度に繰り越されることとなった。その後、マウスの死亡原因はアバスチンを溶解する溶液に問題があったことが証明されたため、25年度は溶液を変更して併用実験を行う。その他は、予定通り研究が進行してきており、実験結果も順調に得られている。したがって本課題は、当初の予定通りおおむね順調に進展していると考えられた。
移植モデルに線維芽細胞増殖抑制剤、血管新生阻害薬を投与し、抗腫瘍効果、リンパ節転移、浸潤について検討する。間質反応についても検討し、線維芽細胞(α-SMA)、血管新生(VEGF-A)、リンパ管新生(VEGF-C)の変化についても観察する予定である。また、移植腫瘍の低酸素状態(HIF-α)、細胞活性(PCNA)についても検討する。これらについて検討することにより移植腫瘍と間質の関係を明らかにしたい。また、抗癌剤と血管新生阻害剤との併用実験を行うため、併用群の移植モデルの実験を行う。その後、上記の検討を併用群についても同様に行い、抗癌剤併用効果を検討する予定である。
25年度はヌードマウスを使用し維芽細胞増殖抑制剤もしくは血管新生阻害薬と抗癌剤を併用し投与して、抗腫瘍効果を検討するため、実験に使用するヌードマウスや投与薬剤の購入を行う。また抗腫瘍効果の検討は病理組織学的に行う予定で、免疫染色に使用する各種の抗体および、染色キットの購入も必要である。さらに、抗癌剤併用群のヌードマウス移植モデルの作製は、25年度に繰り越した68万円を使用する予定である。また、国内学会で成果発表する予定であるため、旅費も使用する計画である。
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Oncology Report
巻: 29 ページ: 445-450
10.3892/or.2012.2161.